建設機械全方位リサーチ/不整地運搬車編【名称&構造】

現在活躍している建設機械の多くは、戦後欧米からの輸入機をベースに国産化が図られていった。しかし今回ご紹介する不整地運搬車は、数少ない日本発祥の建設機械。狭い国土と急峻な山に囲まれた日本ならではの環境が、土砂や資材を運ぶのに便利な不整地運搬車を生み出したのであろう。コンパクトなボディで、大量の輸送が可能な不整地運搬車は、土木、建築現場での省力化に大いに貢献してきた。そんな不整地運搬車の魅力をひもといていこう。
取材協力/ヤンマー建機、めふき重機販売 写真/岡崎昌雄 文/石川ケンヂ
不整地運搬車ってどんな機械?/その1 各部の名称と働き
不整地運搬車は通常のダンプトラックでは進入不可能な不整地や軟弱地でも、土砂や資材の運搬が可能な機械として発展してきた。不整地を走行するために、クローラや複数の車輪を備えているのが、ダンプトラックとは大きく異なる点といえる。不整地運搬車は使用される現場に合わせてさまざまなサイズがあり、構造や機能も異なるモデルも数多く存在する。ここでは代表的なモデルを例に、各部の名称や構造をご紹介しよう。
不整地運搬車の特徴
不整地運搬車で、もっとも特徴的といえるのが走行装置。ダンプトラックでは進入不可能な不整地や軟弱地を走行できるよう、高い走破性を持った走行装置が装備されている。走行装置にはクローラ式とホイール式が存在したが、現在はクローラ式が主流である。またダンプトラックと比較すると、積載量の割に機体がコンパクトなのも特徴の1つ。幅や高さが抑えられているため、狭い現場や建物のなか、地下など、ダンプトラックでは入れない場所での運搬作業にも重宝されている。
ダンプシリンダ

ベッセルをダンプアップするために使用される油圧シリンダ。このシリンダのサイズや能力によって、ダンプアップの能力も左右される重要なパーツ。右側に見える赤いバーは、安全バー。点検などでダンプアップ状態を保持する必要がある場合に、ベッセルが下降してこないよう支えるための安全装置。
旋回フレーム

ベッセルとダンプシリンダ、安全バーを装備し、本体フレーム上部に設置されているフレーム。下部には旋回ギアが設けられており、ジョイスティックの操作に合わせて、フレーム全体が自由に旋回する構造となっている。旋回フレームが旋回することで、ベッセル、ダンプシリンダが一体となって旋回し、後方はもちろん任意の位置での排土作業を可能にしている。
アイドラー

クローラ後端に装備されている歯車状のパーツ。クローラ後端を保持すると同時に、クローラを後方に引っ張ることで、クローラを最適な状態に保ち、良好な接地状態を維持する役目も担っている。アイドラーを後方に引っ張る仕組みには、グリス式や油圧式など、さまざまな方法がある。
キャリアローラ

クローラ上面のたるみを抑え、クローラ外れを防止する目的で装備されているローラ。クローラフレーム上部に取り付けられ、上部ローラともいわれる。クローラの上面のたるみを抑え、クローラ外れを防止する役目を果たしている。

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