建設機械全方位リサーチ/不整地運搬車編【02 バリエーション】

不整地運搬車ってどんな機械?/その2 どんな種類がある?
一口に不整地運搬車といっても、使用される目的や現場に合わせてサイズや構造に数多くのバリエーションがある。ここでは主に荷物を積むためのベッセルにスポットを当て、どんな違いがあるのかご紹介していこう。不整地運搬車の大きな特徴である走行装置とともに、ベッセルも各モデルのキャラクターを決定づける大きな要素といえる。それぞれが活躍する現場や使用方法などと合わせて、不整地運搬車のバリエーションをご紹介していこう。
取材協力/ヤンマー建機、めふき重機販売 写真/岡崎昌雄 文/石川ケンヂ
ホイール式不整地運搬車はどこに
不整地運搬車の歴史は、クローラ式から始まった。その後ホイール式が登場し、6輪駆動、8輪駆動など数多くのバリエーションが開発された。しかし現在、ホイール式は姿を消し、販売されているモデルは存在しない。その大きな理由の1つは、軟弱地での走破性といえるだろう。ホイール式は接地圧が高いため、ぬかるみでスタックの原因となってしまう。またタイヤを装備しているため、空気圧のチェックやパンクのリスクとも無縁ではいられない。こうした点からホイール式は、徐々に性能を上げていったゴムクローラに取って代わられてしまったのであろう。

8輪駆動ならではの優れた走破性と独自のトランスミッションによる高い機動性を誇ったヤンマーディーゼルのYFW20DW。土木現場での土砂運搬はもちろん、山小屋などへの資材運搬など、幅広いフィールドで活躍した。
180°旋回ベッセル

スクープエンド型ベッセルの形状がよく分かるサイドビュー。積載量を確保するため、三方開ベッセルよりもフロント側は深く、後方が切れ上がっている。
通常の後方への排土に加え、任意の位置での排土作業を可能にするため、180度旋回する機能を持ったベッセルを装備したモデル。旋回式のベッセルはどの位置でもダンプ、固定が可能。効率的な排土作業が行え、スペースの限られた現場などで威力を発揮する。移動しながらでもスムーズな排土が行えるよう、ベッセルには排土性に優れたスクープエンド型と呼ばれるタイプを装備する。スクープエンド型ベッセルはリアゲートがなく、左右アオリが固定されている。そのため資材運搬作業にはやや不向きで、土工工事特化タイプともいえるだろう。

後方にフルダンプした姿勢。リアゲートがなく、ベッセル自体で排土を行うため、三方開ベッセルよりもダンプ角度が大きくとられているのも、スクープエンド型の特徴だ。

後端が切れ上がったスクープエンド型ベッセルを装備した姿は、汎用ダンプトラックとはまったく違う印象。不整地運搬車が、建設機械であることを改めて感じさせる。

180度旋回ベッセルを採用したヤンマーC30R-3では、ベッセル操作にもジョイスティック方式を採用。ベッセルの旋回、ダンプなどの操作がレバー1本で行える。

旋回フレームごと旋回するため、ベッセルの位置にかかわらず、十分なダンプ角度を確保することができる。ヤンマーC30R-3は、85度のダンプ角度を誇る。

メインフレームの上に設置された旋回フレームが、左右に旋回。旋回フレームに配置されたベッセルやダンプシリンダーも、それに合わせて左右に旋回する。

後方にフルダンプアップした姿勢。ベッセルが180度旋回できるよう、ベッセル前端は、船の舳先のような形状にカットされている。

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