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首都圏外郭放水路“地下神殿”の守り人が「もっと見学に来て」と願うワケ【前編】

首都圏外郭放水路“地下神殿”の守り人が「もっと見学に来て」と願うワケ【前編】

写真/奥村純一 取材協力/国土交通省 江戸川河川事務所

埼玉の「地下神殿」として名高い、国土交通省 首都圏外郭放水路。その荘厳な景色に魅了された来訪者数は数知れない。8月からは、社会実験という形で新たな試みもはじまった。

とはいえ、施設の性格的にはいざという時に稼働するものの、普段は地中にひそむ防災インフラ施設である。語弊を恐れずに言えば、できるだけ稼働しない方が平和でいいのかもしれない。それなのに、社会に対してオープンであろうとしている。ちょっと不思議な感じがする。

なぜ施設をオープンにするのか。そこにはどんなねらいがあるのか。

そして、この施設をつかさどる“守り人”は、どんな思いを抱いているのだろうか。

人がゴミのように見える調圧水槽

今回案内してくれたのは、国土交通省関東地方整備局 江戸川河川事務所 首都圏外郭放水路管理支所の長 康行さん。穏やかで優しげな口調で、“守り人”はわれわれ取材班を地下神殿に導いてくれた。

地下神殿の守り人である長さん。

まずは、サッカーグラウンド下にあるという調圧水槽へ。

この真下に、地下神殿が……!!

2001年に完成した地下神殿。

階段に入った瞬間に、モワッとした湿気を感じた。

階段の湿度は高い……。

温湿度計によれば、屋内の気温は20℃、湿度は75%だ。

それもそのはず、地下神殿の湿度は75%!!

階段を降りるとすぐ、規則正しく並ぶ柱が見えた。いったいどうやってこの柱をつくったというのだろう。

階段からの眺め。

「まず土留めの壁をつくったんです。その中をくり抜くように掘っていって、コンクリートで床をつくって、そこから柱を少しずつ立ち上げていきます」と長さん。

これが地下神殿である。

単体だといまひとつ大きさが分かりにくいので、取材に同行した上司を比較のモデルにしてみた。

……そのスケールがおわかりだろうか。

心が大きな上司でも小さく見える。

「人がゴミのようだ」という『天空の城ラピュタ』のムスカ大佐の台詞を思い出す。

(決して上司をゴミと言っているわけではない)

いざという時はダムの放流のように、この地下神殿にすさまじい水圧で濁流が流れ込むのだろうと思っていた。しかし、それは誤解らしい。

「隣の第一立坑のさらに50メートル深いところに横トンネルの出口があります。そこから水が流れ込んできて,じわじわと水位を上げてきて,立坑の横穴から調圧水槽に流れ込みます」(長さん)

奥に見える立坑から水が流れ込んでくる。

こうして調圧水槽に泥水が流れ込み、水位が上がっていくという。吸水口には格子状のスクリーンが備わっているので、生き物が入り込むこともほぼない(ごく小さな生き物が入り込むことはあるらしい)。

そして水が溜まると、1秒間に200立方メートル、25メートルプール1杯分の吸水力を有するポンプによって、地下神殿から吸い上げられ、江戸川へ放流される。動力源であるガスタービンは、航空機用のそれを改造したものだそうだ。

「洪水が収まって,水が流入してこなくなると,ポンプの羽根車の高さ以上は江戸川に排水できないので,『ポンプ停止水位』から下に溜まった水は,小さいポンプで元の川に戻します」(長さん)

泥水が引いた後には、泥が堆積している。年に3センチ程度堆積する泥は、ブルドーザーで除去するのだそうだ。ブルドーザーはどこから入るのか?

「上部に開口部があるので、そのふたを開けて,クレーンでブルドーザーを吊って降ろしています」

除去した泥は堤防工事などに活用されるんだとか。とはいえブルドーザーが出動するのは年に1回。観光施設として見学会のエリアは、毎回、人力で掃除しているそうだ。

ところで水が満杯になると、どこまで達するのだろうか。

「なんとなく跡がついていますよね、あのあたりまでです。上の白い四角い表示のところまで水が行くようになっています」

ここまで水が来るのか……。

長さんによれば、ここの施設全体に一度に溜めこめる容量は67万立方メートル。池袋のサンシャインビルの1杯分ぐらいの容量だ。ちょうどこの通路の下ぐらいまで、雨水が湛えられた状態になる。

ポンプで排出できるので、何度も溜め直すことができる。過去最大流入量1,900万立方メートルを記録したのは、2015(平成27)年9月の台風17号・18号である。そう、茨城県常総市周辺で鬼怒川が決壊し、大きな被害をもたらしたあの時の豪雨だ。あの時は、東京ドーム15杯分に相当する量の水を処理したのだという。

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「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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