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首都圏外郭放水路“地下神殿”の守り人が「もっと見学に来て」と願うワケ【後編】

首都圏外郭放水路“地下神殿”の守り人が「もっと見学に来て」と願うワケ【後編】

地下神殿を護る誇りとよろこび

「地下神殿の中の人」として地元界隈でも有名な長さん。

長さんは、昨年の4月からこの施設に配属となった。とはいえ、施設の存在はずっと知っていて、建設中に見に来たこともあったそうだ。

「はじめて見た時には、土木の技術屋としても『これはスゴイものを造ったな』と思いました」と語る長さん。

「見ていただいた調圧水槽は、神殿のような荘厳な雰囲気を持った構造物なんですけれど、それを神殿を意識してデザインしてつくったものではなく,洪水のための必要な機能を持たせた施設としてつくったにもかかわらず、美しさを兼ねそなえている点が、個人的にはすごく魅力的だと思っています」

いま、この“守り人”の仕事に就いてどんなことを思うのだろう。

「河川が増水しやすい6月から10月、いわゆる出水期というのは常に緊張感をもっています。天気予報や川の水位の状況を常に気にしていて,台風や大雨が降るという時は,夜でも雨の降り方などを気にかけている。そこは緊張感をもって取り組んでいます」

雨量が多く一定の水位に達すると,アラームが鳴る。そんな時は長さんをはじめ5~10人のスタッフが出勤し対応しなければならない。台風が多かった今年は、夜中の2時ぐらいに駆けつけたこともあるそうだ。

もちろん非常時だけでなく、平常時も気を抜くことはない。

「機械設備はちゃんと点検してないと,いざという時に動きません。毎月決まった点検を行っていますし,土木構造物についても異常がないか,出水期前に実際にトンネルの中を歩いたりして,点検も行っています」

この施設に限っては今年は稼働することは少なかったが、台風による豪雨被害が頻発したこともあり、防災意識の高まりを感じるという。

「この地域の住民かどうかは分からないんですが、西日本で今年大きな被害があったのを受けて,『首都圏外郭放水路のようないい施設があるのだから,西日本にもこのような施設をつくったらいいんじゃないか』というお問い合わせというか、ご意見をいただいたこともあります」

別の見方をすればそれは、同施設の役割や効果をじゅうぶんに理解し評価した肯定的な意見だともいえる。

これまで多くのメディアにも登場し、アーティストのミュージック・ビデオや特撮ヒーローの撮影にも使用される地下神殿。施設内の廊下には、これまで訪れた有名人のサインがところ狭しと飾られていた。有名人のサインが飾られた飲食店がとても美味しいで評判の店だと感じるように、PR効果は抜群だ。

「お客さんがサインを見て,喜ぶんですよね。『あの有名人が来た施設に自分も来たんだ』って。そうやってもっと身近に感じてもらえば、施設の魅力向上に繋がっていくと思います」

地下神殿だけでなく、この操作室も戦隊モノの秘密基地っぽい。

すでに地域住民には広く知れ渡っていて、「地下神殿で働いているんです」と言えば,話はすぐに通るらしい。近隣に住む長さん自身もテレビ取材を受けることがしばしばあり、誇らしい気持ちで勤務先のことを話せるという。

「いままで49万人が訪れていて,今年は取材や撮影の件数もすごく多くなっています。こうやって取り上げてもらえば,さらなる見学者増につながるので,やはり達成感があるし、やりがいを感じますね。かなり広報的に効果を出しているという実感も持っています」

この取材当日も小学生の子どもたちの見学会が実施されていたが、彼らはこの施設を見て何を感じただろう。建設技術者の不足が叫ばれる昨今において、首都圏外郭放水路の見学会における未来への波及効果を、長さんはひそかに期待している。

「いつか、このような人気のある魅力的な構造物に自分も携わってみたいという意志を持っていただけると,私としては非常にありがたいですね」

 

大雨で地上にあふれた水を、地下の巨大なスペースにいったん溜めて、調整しつつ逃がす。考えてみればきわめてシンプルで、意外なほどにアナログな施設である。

しかし、それを言うはたやすく、行うは難(かた)し。

大工事を経て完成させた人々の苦難はもとより、運営を続けていく人々の絶え間ない努力に思いを馳せつつ、一度は足を運んでみることをおすすめしたい。

地下神殿よいとこ、一度はおいで!!

 
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「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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