建設の匠
Powered by
建設転職ナビ
メニュー
メニュー閉じる
ビジョナリー

気候変動時代到来までにダム技術は伝承できるか。ダム技術センター理事長・川崎正彦氏の危機感

気候変動時代到来までにダム技術は伝承できるか。ダム技術センター理事長・川崎正彦氏の危機感

これがダム技術者の生きる道?

放流設備を増設したり、土砂堆積を防いだり、あるいは堤体そのもののかさ上げをおこなったりする。それが「ダムの再開発」だ。

【参考記事】萩原雅紀の「ダム」道。【04】バージョンアップで復活!不死鳥のダムたち

建設当時より雨量が増えたのなら、それに対応できるように流せる水量や貯められる容量を増やせばいい。話は実にシンプルである。

しかし、いざ建設となると簡単にはいかない。「すでに水が貯まって利用している」ことがネックになるのだ。

ダム新規建設の際はトンネルを掘り、河川の流れを付け替える。そうなればダム建設予定地は水のないドライな状態。ある程度の自由度をもって施工できる。

しかし再開発はダムを運用しながらおこなう。常に水を貯めてある状態だ。洪水調節や利水補給などの機能を保持したまま、たとえばかさ上げ工事をしなければならない。

「その状況でダム本体に穴を空けらなければいけない。下手に空けたらダムの水が抜けてしまうので、上部に蓋をして止水する技術が必要」と川崎氏。

その際に工事を担うのは潜水士だ。場合によっては100m近く潜り、高い水圧がかかる水中で作業をおこなう。昨年、水力発電施設を点検しようと潜水し、導水管に右腕を引き込まれて不幸にも亡くなった作業者の方がいたが、このように技術を持った人もまた、かけがえのない存在である。

なにより時間のかかるダムの建設工事ゆえ、その状態をキープするのも大変。……考えるだけでも難易度は高そうだ。

「工事が難しいんですよ。それにいかに治水目的と言えども、下流の利水者や発電の関係者たちと調整をしないと再開発はできない。彼らをフォローしながら一緒に動いていかなければならない時代に入っています」

施工計画の立案も骨が折れる作業だ。なんせ最終設計図だけではどうやってつくるか判断できないことが多すぎる。施工⇔設計のこまめなやりとりによる設計・施工の図面制作がマストになってくる。

ちなみに海外ダム事情はというとまだ新規開発が主流で、「ダムの再開発」は国土の狭い日本特有の課題だとか。参考となる事例もなく、一つひとつ条件が違うダムを対象に、日本の技術者は独自に知恵を絞らねばならない。もちろん某バラエティ番組のごとく「ダム(湖)の水ぜんぶ抜く」わけにもいかない。そして追い打ちをかけるように……。

「ダム技術者が、他方面に引っ張られているんです」

川崎氏はおもむろに眉間にしわを寄せた。

 
1
2
3
4
5
6
 
WRITER
「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
建設転職ナビ