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気候変動時代到来までにダム技術は伝承できるか。ダム技術センター理事長・川崎正彦氏の危機感

気候変動時代到来までにダム技術は伝承できるか。ダム技術センター理事長・川崎正彦氏の危機感

ひっぱりだこのダム技術者

いま、ダム技術者が不足する事態が迫っているというのだ。……いったいなぜ?

まずは、国や都道府県のダム建設をおこなう民間のダム技術者について見てみよう。ダム建設に関わる管理技術者には「CMED」という資格が必要だ。

「ダムを安全につくっていくように、建設大臣の認可によるダム工事総括管理技術者(CMED)制度が1987年に創設されました。これは土木分野における最難関試験です。まず受験資格が大変で、ダム現場で10年以上、ないしはダム現場を7年含む土木現場15年以上の経験がなければ受験できず、いちばん若い大卒者で32歳から。いわば“現場第一主義”の資格です」

「土木分野の最難関」という川崎氏の言葉に「えっ? あのコンクリートのダムをつくるのって、橋やトンネルよりも難しいの?」と意外に感じられる方もいるかもしれない。

実はダム建設においては、沈む町に替わる町の造成のため、新たに仮設道路も橋もトンネルも宅地も、すべて建設する必要があるのだ。また、ダム本体の工事も、圧倒的スケール感と計画の緻密さを併せ持つ仕事だ。「その資格を取った技術者は、フィルダムだと400~500万トンぐらいの土を動かし、400~500人の作業員をたばね、年間100~200億円を使う現場でもひとりで全責任を負って施工管理できる、他に類を見ない技術レベルの仕事」だと川崎氏。

そんなCMEDの試験は、相当の難易度だ。

「2次試験などはどこぞのダムの発注図面をポンと渡されて『午前10時から午後5時までのあいだに、リフトスケジュールや機械設備の配置などすべての作業を含めた施工計画をつくり、工期計算しなさい』。これは大変ですよ。さらにその後は大ベテランのダム技術者がつとめる面接官に『なぜこんな数字なのか。この工程は長すぎるのではないか』『このバケットは何トンで計画してるのか?』などと突っ込んでくるのに対し、100点の答えはないにしても『私はこう考えた』と理由を説明しなければいけない」

CMEDには2020年1月までに822人が合格し、現役資格登録者は516人だとか。その内訳は「すべてゼネコンの中の人」。発注者も建設コンサルタントも受験できない。ダム現場に行っているのはゼネコン社員しかいないからだ。

そんなCMED有資格者はゼネコン各社の垣根を超えて、持てる情報や知識を共有し合うほどに仲間意識が強い。そういえば飛島建設社長の乘京氏もそう語っていた。しかしやはりというか、高齢化が悩みのタネ。今後は年間20~30人が現役から抜けていく算段だという。

彼らの技術力が求められる場。それはたとえば、東北の復興現場だ。被災した町自体をかさ上げし、堤防を築く。工場や設備の設置方法や資材を運ぶダンプトラックの大きさ、ベルトコンベアで運ぶ際の想定――そんな工事は、ダム建設と同じでダム技術者の活躍の場である。無から巨大構造物をつくられる彼ら技術者の力がフルに発揮されるのは喜ばしいことだ。

しかし、昨今の技術者不足のなかで、その技術の高さが仇となって支店の幹部は復興現場のCMED有資格者を手放さず、彼らはダム建設現場に戻ってこれない。一方で気候変動によって災害が頻発し、全国各地で災害に強いまちづくりをしようということになれば、ダム技術者は今後ますます被災地復興にひっぱりだこになるだろう。

ダムの新規建設が少なくなる2020年代。「受験資格を満たすために必要なダム現場の経験が不足する」時代が、やがて到来する。そうなれば10年~20年後、ダム再開発にともなうダム技術者の需要は増すのに、育成の場がないために人材供給ができなくなるのだ。

 
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「建設の匠」編集部
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「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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