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ビジョナリー

気候変動時代到来までにダム技術は伝承できるか。ダム技術センター理事長・川崎正彦氏の危機感

気候変動時代到来までにダム技術は伝承できるか。ダム技術センター理事長・川崎正彦氏の危機感

誰のためにダムをつくるのか

かつて黒部第四ダムや佐久間ダムの建設記録映像を観たとき、作業現場の危険さや特撮映画のような大発破(火薬でダムサイトの岩石を破壊すること)にとにかく驚いた。

おそらくダムが全国にたくさんつくられている頃は豪快に発破し、全国から集まった怖いもの知らずの猛者たちが夜間も働いていたのだろう。命にかかわる事故も少なからずあった。そして建設ラッシュの時代には巨額のお金が動く。お金に群がる輩による汚職事件などもあっただろう。

……ひるがえって2020年のいま、ドッカンドッカンとダイナマイトでぶっ飛ばす建設工事など絶対にできない。「火薬の量をできるだけ減らし、音や振動を出さないような発破」をしているそうだ。高低差があるブロック工法から平面作業のRCD工法になって落下死亡事故が激減し、談合も官製談合防止法で禁止されて久しい。

「昔はとにかく短時間で建設するのが効率がいいと言われてきた。当たり前だけれど、いまの方が昔に比べてはるかに制約条件が多くなっている。いまは土地を提供していただくと同時に、周辺の生活基盤をつくるためりっぱな道路も、生活再建支援策もつくらなければいけない。ダムをつくる際に補償金を払うだけでおしまい、ではダメなんです」

ざっくり言うと巨額の事業費の3分の1は用地補償や生活再建に費やされ、3分の1が道路付替え費、ダム本体工事に使われるのは3分の1ぐらいしかないらしい。そびえ立つダムは、思ったよりも配慮のカタマリだった。

それでも、ダムはなかなか存在を認められない。

ダム建設最大のネックは、自然環境保護対策だ。

「ダムが自然環境にまったく影響を与えないとは言えない。流水型ダム(自然⇔河川の標高に穴が空いているダム)等でなければ魚の行き来もできなくなるし、どうしても自然環境は変えてしまうんです。だから自然環境保護の観点だけで見られて、ダムは批判されてきた。治水や水道などの水利用をわれわれの暮らしと河川環境を含めて全体で考え、対応策を示し、ダムをつくる際にも最大限の環境対策をおこなってきた」。川崎氏は渋い顔でそう漏らす。

自然環境保護――。「本気で自然環境保護をしようと思うなら、人類は滅びるしかないのではないか」。高校生の時の筆者はそう考えていた。国連で「あなたたちを許さない」とオトナを批判する某女史も顔負けの暴論だ。

さすがにいまは、そんなことは思わない。人間は知恵を絞って、現代文明の維持と自然環境保護の妥協点を探るしかないと思う。実際にダムは自然環境にできる限り配慮しながら、下流に住む業の深い人間の暮らしを守るために存在してくれている。

自然環境や地域住民に少なからず伴う犠牲。ふるさとから離れなければならない人たちの痛みや哀しみも、ダム関係者であればすべて百も承知だろう。こうして建設されるダムは、自然環境と人間の便利な暮らしの妥協のカタマリでもあるのだ。

 
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「建設の匠」編集部
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