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ビジョナリー

気候変動時代到来までにダム技術は伝承できるか。ダム技術センター理事長・川崎正彦氏の危機感

気候変動時代到来までにダム技術は伝承できるか。ダム技術センター理事長・川崎正彦氏の危機感

ダムをつくる人、まもる人に敬意を

どれだけ技術が進歩しようとも、ダムは墨俣一夜城のように短工期ではつくれない。長い年月をかけて周囲に配慮しながら粛々と建設しているあいだに、水のニーズ変化や気候変動が起きて「もう需要がなくなったから要らない」と言われても困るというものだ。

長い建設計画の最中には必ず反対運動が起きて、政局次第では計画見直しさえ起こりうる。名建築家のように、建設にたずさわったダム技術者の名が語り継がれるわけでもない。

調整と説明と配慮と妥協――ダム技術者は本当にストレスフルだよなあと勝手に心配になる。挙句の果てに苦労してつくったダムに対し「不要論」まで叫ばれた日にゃ、心が折れてしまうのではないか。「自分たちはそんなに悪いことをやっているのだろうか」と……。

 

ダムを長らく見守ってきた川崎氏が強い衝撃を受けたのは、ダム賛成・反対の次元を超えた第三極・ダムマニアの登場だ。これまでダムは賛成か反対かと叩かれてきたが、いまではダムを素直に楽しんでいる人々がいるのだから。

台風19号時のただし書き操作や八ッ場ダムの件では、大手メディアのダム報道に対し、データで持って冷静に「ダムはこんなにがんばっていた!」と異を唱えたり、日本ダムアワードで讃えたりしていた。そんなダムマニアの存在に、勇気づけられたダム技術者は相当多いはずだ。

日本ダムアワード2019のようす

当メディアでもおなじみ萩原雅紀さんはダムマニアのパイオニア的存在だけれど、みずからダム動画を制作・配信するなどして、ダムビギナーへの門戸を積極的に開いている。それは若い世代へダムの魅力と意義を伝えていかなければならない、という使命感あっての行動だろう。

 

実を言うと筆者は、かつてダムが苦手だった。

幼い頃は放流サイレンを怖く感じたし、底知れぬダム湖のそばを自家用車で走るときには身がすくんだ。また、長良川河口堰建設問題報道で揺れる中部地区にて「自然環境を破壊してまで建設する必要あるんか?」と疑問を持ちながら育ってきた。

しかし、このメディアを通じてダムやダムマニアのみなさん、ダムの中の人たちと触れていくにつれて、ダムに対する恐れや誤解は薄れ、ダムの魅力を感じられるようになった。

ダムの役割や力、それをつくる技術、そしていまのダムの限界――。わたしたちはそれを正しく理解し、適切なかたちで伝えていかなければならないと強く感じる。

川崎氏はダムに対する想いを込めて、こう語ってくれた。

「ダム技術者はみんな、ダムがおもろいから、やっているんです。おもろくなかったらやらない。それで自分が一生懸命つくったダムが地元の人に『ありがとう』と言われたら、すごく嬉しいの。『ありがとう』なんて言われたら、もうたまらんよ。地域や人とのつながりもおもろいと思って、やっているんです」

インターネット界隈やリアルワールドで、ダム好きを自称する子供たちを見かけると嬉しく思う。彼らがいつの日か、「ダムをつくる人」の側にまわってくれたら……そう願ってやまない。そしてその日まで、誇り高き「おもろい仕事」であるダム建設技術の火を、我が国から決して絶やしてはならないのだ。

 

写真/編集部、ぱくたそ、奥村純一(首都圏外郭放水路)

 
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「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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