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「働き方改革はコミュニケーション改善から」小室淑恵氏が建設パーソンに望むこと【前編】

「働き方改革はコミュニケーション改善から」小室淑恵氏が建設パーソンに望むこと【前編】

「誰かの変化を待つより、自分たちが先に変わる」

「ここ1、2年は『どこかの何かが変わるのを待っていては、本当に未来がない。自分たち発でもやれることからやろう』という状況に変わってきました。最近だと、数年コンサルで関わっている鹿島建設中部支店さんが、本気の取り組みをはじめています。しかも生態系がつながっているから、発注者一社が意識を変えると、あっという間に関連する協力会社のほうに影響が広がっていく。上流次第で働き方は変わると実感しています」

実際、鹿島建設中部支店の現場では、建設現場において直近の目標となっている“4週8休”をすでに実現しているんだとか。小室氏はその報告を受けて「むちゃくちゃ嬉しかったですよ」と満面の笑顔で語る。

さらに著書『働き方改革 生産性とモチベーションが上がる事例20社』(毎日新聞出版)でも紹介されているコンサルティング3年目の新菱冷熱工業を例に挙げた。

「最初は本当に思考停止状態で、業界全体が変わらない限り、働き方改革なんて無理、という雰囲気が強く、最初の一歩を踏み出すまでには禅問答みたいなやりとりもあって、後押しには力が要りました。コンサル開始当初は、現場で早く帰る工夫をする会議をしようと思っても、同じ現場で仕事する協力会社のベテランで腕のいいオヤジさんには響かず、会議に参加しても乗り気でないとか、複数社で仕事をする現場ならではの苦労がありました。

そんな新菱冷熱工業も、働き方改革が軌道に乗り出し、若手からは『スキルアップすればもっと効率的に仕事ができる』という意見が出てきました。

実は従来、若手には『ベテランの先輩につまらない質問をして邪魔しちゃいけない』という遠慮の雰囲気が強かった。一方、先輩は『若手が聞いてこない、聞いてくれば教えるのに……』と、こちらも受身で、若手と先輩がお互い理解し合えていませんでした。

『自分たちからできることをはじめなきゃ』『外的要因の問題ではなく、社内の問題である』と捉え直して、先輩が若手の遠慮に気づき、わからないところはすぐ聞いてくれと助けるようにしました。先輩が歩み寄ってくれる関係性ができてくれば、遠慮がちだった若手も、実はやる気も向上心もあったことが分かってきた。風通しがよくなってお互いが見えてくることで、生産性が上がってきています」

そんな新菱冷熱工業も、いままでさすがに“4週8休”は無理だと思っていた。ところが鹿島建設中部支店で“4週8休”が実現されているという話が社内で共有されると「納期が遅れたりしないのか」「ちゃんとできるのか」と質問が殺到したそう。「あらかじめ4週8休を前提にしたスケジュールを引いたら、何の問題もなくできている」との回答にまた驚いたそうだ。

大きなムーブメントを、小室氏は肌で感じている。

「少し前までは、『働き方改革は自分たちの庭をきれいにするだけのもの』でした。つまり労働基準監督署に目をつけられないため、自社の数値目標を達成するため、上司に怒られない残業時間におさえるための働き方改革だった。ですから、下請けの企業に残業を押し付けて自分達は早く帰るような企業が増えていました。しかし、いまは人材を「他業界と奪い合っている」わけです。生態系まるごと働き方改革に取り組んで、業界の悪評を覆さなければ、業界そのものが不人気になって滅びる――そんな理解が、数年でずいぶん進んだと思います」

小室氏が名指しした働き方改革最難関の三業界のうち、運輸業界が建設業界より1年ほど早く、その危機的状況に気づいたという。そこで倉庫業と物流業のあいだにあった理不尽な上下関係的商慣習も含め、すべてが見直されている。建設業界も、持ちつ持たれつの“チーム建設”としてみんなが幸せになっていける環境をつくらなければ、メンバーは泥船から逃げていくだけだ。

「そして誰もいなくなった」という破滅的な未来を回避するために、われわれは何をしていくべきなのだろうか――。

写真提供/ワーク・ライフバランス

 
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「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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