ビジョナリー
「働き方改革はコミュニケーション改善から」小室淑恵氏が建設パーソンに望むこと【後編】
2018/11/30
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筆者:「建設の匠」編集部
「あの人しかできない」“匠の技”の是非
小室氏が長時間労働の原因として挙げる理由に、“属人化”がある。
しかし、建設業界のプロが持っている“匠の技”というのは、それが高度であればあるほど、きわめて属人的なもののように思えるのだが……。
そんな素朴な問いを投げかけたところ、小室氏から次のように問い直され、言葉に詰まった。
「そもそも“プロ”って、何なのでしょうか?」
小室氏はこう続ける。
「自分にしかできない仕事をするのがプロではないと思います。本当のプロは、いざというときに絶対にお客さまに対して穴を開けない。仕事だけはつつがなく進むように、普段からそのような環境を整えているもの――定義をそう変えていく必要があります」
建設業に限ったことではなく、ほぼすべての企業(ホワイトカラー含む)で、自称・他称の“匠の技”問題は起きていると小室氏は言う。みなそれぞれ、自分しかできない仕事に誇りを感じるとともに、能力の高さを裏付けるもの(=給与水準の裏付け)になっている。
しかし、それはインフルエンザにでもかかれば、あっけなく仕事に穴が開くほど不安定なものだ。そんなに持続可能性の低いものをプロの仕事と呼んでいいものか? という小室氏の指摘は、至極ごもっともだ。
行うべきは、分業化や複数担当制、可視化ならびに共有化のためのITインフラ整備だ。管理職による人事評価基準についても、「いかに仕事を早く終わらせたか」「低コストで終わらせたか」という属人化しやすいものではなく、「ノウハウを共有させたか」「チームでビジョンを共有し、形にできたか」などを評価する必要がある。もちろん、これらの実現については、意思決定層がきちんと仕組みを整えなければならない。
「そうすれば、ベテランの方の動きも劇的に変わります」と小室氏は力強く言い切った。
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「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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