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日建設計社長・亀井忠夫氏は「パッションと調整力」の両輪で世界最大級の設計事務所を牽引する【前編】

日建設計社長・亀井忠夫氏は「パッションと調整力」の両輪で世界最大級の設計事務所を牽引する【前編】

ユーザーの期待を超えるのが日建設計の仕事

さて、ここまで読んで、亀井氏はどんな気質の持ち主だとお思いだろうか? 日建設計でリーダーをつとめるのだから、さぞエッジの効いた、いや、ややもするとクリエーター気質(しかも神経質)なのでは……という畏れに近い予想はいい意味で裏切られた。とても柔和で、物腰やわらか。初対面の筆者のぶしつけな質問にも、しっかりと耳を傾けてくれた。

この高いコミュニケーション力こそ、日建設計の、亀井氏の武器なのかもしれない。

亀井氏が入社した1980年代、全国の企業がこぞって研究所を建てていた。彼自身も午前と午後で別の研究施設の竣工式に出席するぐらいの忙しさだったという。そんな中で学んだのは、調整力だ。

「実際に使用される研究者の方と、建築主としてお金を出す立場の方、それから管理する方、大きくはその3つの立場の方がいるわけです。研究者は自分たちにいい環境をつくりたいとどんどんおっしゃる。お金を出す方は予算を絞ってくる。管理側はファシリティ管理の視点で見る。それぞれがそれぞれの立場で矛盾したリクエストを出されるので、それを調整していくのも、こちら側の役割。

また設計者は設計者のほうで、『もっとこうしたほうがいいんじゃないか』と設計者として表現したいこともあるから、それらをいかに折り合いをつけていくか、ですね」

亀井氏いわく、「ユーザーの要望を満たすことがまず大事」。しかしそれだけではプロの仕事ではない。「それだと70点か、及第点」なんだそうだ。

「さらにわれわれなりの新たな視点で提案して、ユーザーが『そのほうがもっといい!』と思われたとき、初めてわれわれの価値が出てくるんです。3つの立場の異なる視点からの要望が、わたしたちの提案で全部解決できればみなさん、ハッピーなわけです。どこかひとつを抑えすぎたり、最後までどこかにしこりが残っていたりすると、竣工後にちょっとしたことでもクレームが来るようになる。いい関係をつくり、いい提案で解決することがわたしたちの役割です」

組織設計事務所が担当することが多い大きなプロジェクトではステークホルダーが多くなる。複数の異業種の企業がかかわることもザラだ。大変な調整能力が必要とされるのは言わずもがな。だからといって、バランスを取ることに終始するのではなく、さらに期待を超える結果を創る。……これはどんな仕事でも当てはまりそうな話である。

ただ、90年代前半までは設計者側主導で進められたものが、やがてクライアント側にも建築設計を専門とするメンバ―が加わるようになり、クライアント側主導での協議が増えてきたという。要望や調整、確認が多くなれば、設計事務所側の仕事は膨れあがり、忙しくなる。

かつては馬車馬のように働き、「学生のときから製図台の下で寝ていましたから、『ここで寝ろ』と言われれば、どこでも寝られる」と話す亀井氏。彼自身は学生時代からしごかれてきたから耐性はあるそうだ。

しかし2019年のいま、そんな働き方や価値観を押し付けたら、誰も入社してくれないだろう。では、亀井氏率いる日建設計が考える、“次世代の建築設計の匠”とその働き方とは?

 
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「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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