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日建設計社長・亀井忠夫氏は「パッションと調整力」の両輪で世界最大級の設計事務所を牽引する【後編】

日建設計社長・亀井忠夫氏は「パッションと調整力」の両輪で世界最大級の設計事務所を牽引する【後編】

大切なのはものづくりへの愛と情熱

今後、優秀な人材を獲得していくためにも、ブランドイメージをさらに上げていき、建築に関わらない一般の人が知るような会社にしたいと、亀井氏は今後の展望を語る。

「一般の方から見れば、建築界って黒川紀章や丹下健三など“ザ・建築家”とゼネコン、その2極なんですよ。われわれのような組織設計事務所は、ゼネコンと一緒に見られることも多々あります。『ある特定のクライアントに利益誘導してる、社会のために仕事しているのか?』という見方をされることもあります(苦笑)。

そうではなくて、これからは『直接的なクライアントはディベロッパーや鉄道会社ですが、最終ユーザーは一般の市民。わたしたちはそのあいだで公正中立な立場で、常に社会のことを考えながらやっているんです』という立ち位置を伝えていきたいと思っています。なぜなら最終的に建築ができたら、オーナーのものだけではなく、市民に直接関係するものになりますから。わたしたちの仕事は大規模ゆえに社会的影響も大きなものが多い。最終ユーザーのことを考えないと、とても設計なんかできない」

近年の日建設計はデザイン、技術系、コンサルティングなどを担う会社に成長してきた。そこには経営企画を担える人材も、海外の法務的な業務が任せられる人材も必要だ。一般人に対する知名度を上げなければ、それらに関する人材も集まってこない。だから「わたしたちの立ち位置や姿勢をもっとアピールしていきたい」と強調する。

さて、さいたまスーパーアリーナ、クイーンズスクエア横浜、東京スカイツリー……亀井氏が携わってきたものは、いずれも大きなプロジェクトばかりだ。ものづくりがしたくて、さまざまな建築設計をおこなってきた彼と、旧都城市民会館の話をきっかけに、最後は「建築の保存活用」の話になった。

亀井氏は、どんな建築でも残せばいいとは考えていない。「建築はモニュメントとは違います。機能的、構造的、美的要素の3点が揃わなければいけない」ときっぱり言う。

ただ、事実としてひとつたしかなのは、どんなに素晴らしい建築設計をしても、それがその設計者の代表作と言われても、「その名建築は設計者のものではない」ということだ。

すこし口惜しそうに話す亀井氏。

「いま東京・大手町界隈も容積率が上がったから、どんどん建て替えが進んでいますよね。その中で『あの建物は残してほしかったなぁ』みたいなものもあるんですけれど、自分が所有しているわけじゃないので、その権限は基本的にはわれわれにはないんですよ。『残したいんだったら自分で買いなさいよ』と言われても仕方がないと思いますが(苦笑)」

設計事務所としては、建築主から設計を頼まれればビジネスとしてはハッピーな話だが、名建築を解体し、そこに建てる建築の設計を担うこともあるだろう。建築設計を生業としていても、みんなが新しもの好きなわけじゃない。ときには日建設計の大先輩が線を引いた名建築の代わりとなる建築をつくることもある。その心境、いかばかりか。

「複雑ですよね、そこは……。古いものを活用してリノベーションして、機能アップしながらボリュームも増えるようなかたちができればいいんですけれど。それで言うと、いまスペイン・バルセロナのサッカースタジアム『新カンプ・ノウ計画』は、過去のレジェンド的な要素を残しながら、まったく新しいかたちに全面改築しています。その意味では非常にハッピーなプロジェクトになると思う」

もしなんの縛りもなく、金に糸目をつけず、好きな建築を買い取れるとしたら? とおとぎ話のような問いをぶつけたら、亀井氏は「うーん」と考え込み、「ニューヨークのクライスラービルかな。時を経てもニューヨークのランドマークとなっているから」と目を輝かせた。

そして日建設計の前身・日建設計工務に在籍した林 昌二氏(2011年逝去)設計のパレスサイド・ビルディング(千代田区)を挙げる。実は日建設計は、2019年にこのビル内に竹橋オフィスを設立したばかりだ。

「パレスサイドビルは50年以上前にできた建物ですが、設計のプリンシプル(信念)が感じられますね。きちんと信念をもって建築主に提案して、それが受け入れられて、できあがった建物というのは、まったく古びないし、逆に価値が出てくるのだと感じました。昨年、運よく空きが出たので入居できたのですが、そんな建物にいま在籍する当社社員が触れられるのは、非常にありがたいことだと思っています」

建築設計という仕事に誇りを持ち、時代の変化やニーズにうまく対応しつつ、いつまでも社会に愛される建築をつくる。パレスサイドビルの一件だけ見ても日建設計のスタンスが垣間見える。その根っこにあるのは、ものづくりが好きだというパッションなのだ。

そんな愛する建築について語るときの笑顔は、ものづくり好きな少年と同じぐらいの輝きを放っていた。

 

 
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「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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