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建設業界のイノベーター・助太刀CEOの我妻陽一氏は「『業界をぶっ壊す!』ではうまくいかない」と堅実に歩を進める【後編】

建設業界のイノベーター・助太刀CEOの我妻陽一氏は「『業界をぶっ壊す!』ではうまくいかない」と堅実に歩を進める【後編】

建設業界のゲーム・チェンジャーとして、各方面から熱い視線を浴びる助太刀CEOの我妻陽一氏。これからの展望、そして事業を進める上での基本スタンスに迫る後編をお届けする。

前編はこちら

謙虚に着実に成長するベンチャー

ここでいまさら言うまでもないが、建設業界は人材不足だ。建設職人も例に漏れず、高齢化が進んでいる。若手の獲得、女性の活躍、さらには外国人技能実習生の活躍が期待されている。

我妻氏は、当メディアが以前取材したLGBT人材採用のサポートをするスタートアップ・JobRainbow代表の星 賢人さんと交流があるらしい。彼の才覚に驚き、投資家に引き合わせたり、ピッチイベント(自社の魅力や将来性について投資家に売り込み資金を獲得するイベント)の参加を薦めたんだとか。ということは我妻氏も若手や女性、さらにはLGBT人材などの活躍の場を増やそうと考えているのだろうか?

彼は一瞬考え込み、言葉を選びながら話しはじめた。

「当社のビジョン『建設現場を魅力ある職場に』を達成するには、若年入職率を上げることのプライオリティは高い。若い人の独立にチャンスを与えるべきです」

そうは言いつつも、「ぼくは2段階で考えています。若者や女性、外国人人材を入れる前に、既存の人材リソースを100%活かしきることが大切だと思っています。情報の非対称性や古くからの慣習によってマッチングできていない状態がいま起きているのであれば、まずはそれを改善する。それから足りない部分を補っていく」。

サンドウィッチマン出演のCMから、ボクシングの試合に年末のテレビ番組「SASUKE」のスポンサーまでつとめるなど、男性寄りでマッチョな印象を受ける助太刀のマーケティング戦略(先日、『コトラーアワード』というマーケティング界の賞を受賞したそうな)。ユーザーとなる建設職人に男性が多いことから、そこに徹底的に照準を絞っている。

しかし彼いわく、「SASUKE」については失敗だそう。

「Twitterでは『助太刀おもしろい』と大盛り上がりだったし、投資家などに対するブランディングという意味では成功でしたけれどね。……あとで気付いたんですが、休める日の少ない職人さんも年末年始はしっかり休むんです。年末に貴重な休日で家にいるときに、仕事関連アプリである助太刀のCMを観て『よし、インストールするか』とはならないなぁ、と」

我妻氏は職人の心理をそう分析し、静かに反省していた。

それでも、助太刀は快進撃を続けている。会員数は毎月1万人のペースで増え、10月にはついに10万人を超えた。スーパーゼネコンの建設現場の1日あたりの稼動人数が7~8万人だというのだから、助太刀はスーゼネと同じ規模の職人を抱えているのに等しい。

さらに重層構造ゆえに長すぎる支払サイトを改善するため、「助太刀Pay」をつくった。首都圏や関西圏だけだったけれど、福岡や沖縄でもサービスを開始した。

昨年大阪を襲った台風15号以来、積極的に災害支援にも取り組んでいる。まるで運転免許証のドナー登録のように、災害支援の経験をプロフィールに盛り込めるようにするなど、災害支援に対しては採算度外視でもやっていきたいと意気込む。

6月には7億円の資金調達を成功させ、ファンドも事業会社も、ラジオ局のニッポン放送までが出資しているほど、投資家界隈からはモテモテだ。彼らの標榜する「建設業に従事する、すべての人たちを支えるプラットフォームへ」を、着々と実現しつつある。

それでも我妻氏は「自分は本当に強運だったので」と謙虚さを崩さない。

「ぼくがあるイベントで講演しているとき、たまたま後ろのほうで聴いていたようで、その日の夜に電話をかけてきてくれたのがセブン銀行の松橋常務(現・専務執行役員)でした。一週間後には役員の方を3人連れてきて、半年後にはもうリリース。クレディセゾンさんも同じように連絡がきました。ぼくにとって一番ラッキーだったのは、応援したくなるようなビジネスアイディアを選んだことだと思います」

建設業で働いていなくても、近年の建設ラッシュや災害復旧などを見て、建設業の重要性を認識した人は多いのではないだろうか。そして、IT化が遅れていることもまた周知の事実だ。

だからこそ、助太刀が社会をより良く変えていくサービスなのだと、言葉を尽くさなくても分かってくれる。助太刀を「外部から助太刀する」応援団が増えていくのは、当然といえば当然だ。

唯一の悩みは、とんでもない勢いで急成長しているだけあって、社内体制が追いついていないこと。「助太刀なのに社内で“助太刀”してくれる人が必要です」と我妻氏は苦笑いした。

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「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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