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建設業界のイノベーター・助太刀CEOの我妻陽一氏は「『業界をぶっ壊す!』ではうまくいかない」と堅実に歩を進める【後編】

建設業界のイノベーター・助太刀CEOの我妻陽一氏は「『業界をぶっ壊す!』ではうまくいかない」と堅実に歩を進める【後編】

建設の世界を変えるプラットフォームでありたい

「⾃分が職人だとして、現場で会った職人さんに『助太⼑交換しましょう』と持ちかけたとき.『おれ、助太刀やってないんだよね』と答えられたら、『(え、助太刀に登録できないのか……コイツちょっと怪しいぞ)』となるぐらい、信頼度の高い仕組みを目指しています」という我妻氏。

すると「ちょっと勘違いされがちなんですけれど」とわずかに眉間にしわを寄せる。「……Uberみたいだと言われるんです」。え? あの「シェアリングエコノミー」のウーバー?

「助太刀によるマッチングが普及していくと、『建設職人はみんな個人事業主になってしまうんじゃないか』と思う人もいるんです。特に国は『建設業に若い人を入れるために社員にして、社会保険に加入させるべきだ』というスタンスですからね」

「われわれは国土交通省さんと何度も意見交換を重ねていて、『ぼくらはUberではない。一時的に一人親方が増えるかもしれないけれど、彼らが助太刀を使って大規模現場の仕事を獲って、儲かれば仲間を社員にすることができる。さらに儲かれば、その社員を社会保険に加入させられる』と伝えています。5年後や10年後に建設現場を魅力ある職場にするような人たちをぼくは育てているつもりです。いま、この瞬間のアプローチは違うように映るけれど、彼らと目指しているゴールは一緒です」

国交省の若手チームが我妻氏を尋ね、濃ゆ~い意見交換をしたこともあるんだとか。

「官僚のみなさんは実はアツい人が多くて、意見交換後に『感動した!』とすごく長いメールをくれるほど。省内でファンができはじめているので、ここは地道にやるしかないなと。逆に『建設業界をぶっ壊す!』的なスタンスでは絶対にうまくいかないと思う。ぼくも建設業出身ですから、ゆっくり時間をかけてやっていくつもりです。ロビー活動だってすごく大切」

ここで我妻氏が急に「思い出した!」というエピソードをひとつご紹介したい。大手サブコンの現場で勤めていたとき、某社製CADの売り込みがあったそうだ。実はサブコンの購買部に営業に行っても門前払いされていたので、現場に顔を出すようになったのだ。

若き我妻氏らはその便利さに惚れ込み、現場単位で契約する。現場ごとの契約が積み重なって、最後は大変な請求額になってしまった。焦った購買部は「会社で契約したのでもう個別で契約しないように」。めでたく一括採用となった……という話。「これって、建設業界をすごく表している話だと思いません?」と我妻氏。

そう、ピラミッドの頂上から働き方改革や4週8休を呼びかけても、末端にはなかなか届かないもの。同様に「助太刀を使ってくれ」と役所やゼネコンに売り込むよりも、気が付けば10万人のユーザーを抱える助太刀の「数の論理」で、足元からひっくり返した方がいい。「50万人までユーザー数が増えれば、本当にすごいことになるな」と某ゼネコンの部長に言わしめた我妻氏は、ひそかにその日をねらっている。

ただ、これだけの巨大産業だから、一足飛びに業界を変えられるとは思っていない。ベンチャーの社長という経歴からは意外に思うぐらい、彼は堅実で泥臭い人間なのである。

それは、渋谷のオフィスを見てもあきらかだ。我妻氏はいわゆる“渋谷のIT社長”なのだが、助太刀のオフィスが入居するビルは決して最新設備を備えたきらびやかなビルではない。本人も「だってぼく、いま車も持っていないし」と屈託なく笑う。

「前もラジオ番組に出演したら、パーソナリティの第一声が『我妻さん、結婚されているんですか? IT社長なんで、女子アナか女優と付き合っていると思って』ですよ(笑)。みんなIT社長というとそう連想するけれど、ぼくはそういうのはあんまり興味がないので」

彼はスーパーカーや豪邸を所有したり、モデルと付き合うことを目標とするタイプではない(余談ながら、一級建築士として設計事務所に勤めている奥様がいる)。彼のスタイルはやっぱり「着実に、堅実に」。

あなたをそこまで掻き立てるものは、いったいなんですか?

「これまでは現場で、職人さん自身が『若いやつなんて来ないよ』『自分の息子には絶対にやらせたくない』と言ってしまっていた。でも助太刀によって、若い人がしっかり稼いで、チャンスをつかめる環境になってきたんじゃないかと思っています。若い人にはどんどん会社を立ち上げたりしてほしいし、そこにまた『職人って、カッコいい』と若者が集まる流れになってほしいんです。ぼくは、そのお手伝いをしたい。一人親方になって会社をつくったら、今度は社員を募集できるようなサービスもつくっていかないと……。

ある方に、『産業の骨格を変えるようなビジネスモデルだ』と言われたことがあります。そんなビジネスモデルを選べたのはすごくラッキーだし、嬉しいし、いまの仕事は楽しい。自分がやりたかったことができているので、夢のようですよ。ぼくはただ、この社会を良くしたいだけ

いずれは世界各地の建設業界にも果敢に討って出ていくはず。我妻陽一という「純粋無垢なイノベイター」の快進撃は、まだまだきっと、止まらない。

写真/髙橋 学(アニマート)

 
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「建設の匠」編集部
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「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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