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「みんなが建設パーソンになる社会へ」ゼムケンサービス代表・籠田淳子氏が夢見る女性活躍の“先”の景色【前編】

「みんなが建設パーソンになる社会へ」ゼムケンサービス代表・籠田淳子氏が夢見る女性活躍の“先”の景色【前編】

「女性には~」という思い込みがもたらすもの

すくなくとも筆者は、「女の子にはやさしくしなさい」としつけられてきた。だから男性として、女性にはキツイ仕事はさせられない。なんせ建設業界は「キツイ、キタナイ、キケンの3K現場」だと昔から言われてきたぐらいだし――などと話したら、微笑みながらやんわりと否定された。

「現場で活躍していた男性ってやたらと脱ぎたがって(笑)、腕でも足でもずっと同じ箇所を使っているから筋肉がすごくて、自分の体を『この力こぶの大きさは~』と自慢する職人は結構いるんです。わたしなんかは『ハイハイそうなのね、ずっと鍛えてたらそうなるのね』などとかわいらしく思って見てしまうんですが、実際の現場では、もはやその筋肉は必要ないんです」

筋肉は必要ない?

「ええ、もういろいろなものの軽量化・省力化で、全然筋力が要らないんですよ。筋肉隆々の職人さんじゃないと活躍できないような現場はもうなくなっていて」

てっきり筋力のハンデがあるからこそ、男性向けの仕事たりうるのだと思い込んでいた。では、半分屋外のような建設現場は冷えるのだから、身体が冷えやすい女性にとって辛いということもあるのでは?

「いまはユニクロのヒートテックをみんな着ています。現場にはヒーターが結構置いてあるんですよ。だから身体に会社支給のカイロを貼っていたりすると、むしろ熱すぎて汗だくになる。あと、現場で歩き回りますから、身体が熱くなるんです。当社の社員は現場に行かなくなると太るようで、『建設現場はいかに身体にいいか』って話で盛り上がっています。むしろジムに通わなくてもいいぐらいに健康的。現場エクササイズですよ!」

なるほど。しかし、安全面に問題がある現場で、女性に仕事をさせるのはよくないのでは……。

「いままでは本当に『現場に女の人が歩いていると危ない』と言われました。『なにが危ないの?』と尋ねれば、『女の人は転んだり、ケガをしやすい』『女の人がいたら、男の気が散るから、安全作業ができない』って(笑)」

いまは時代の変化もあって、面と向かってそんなことを言われなくなったそうだ。それでも、それでも女性の場合は――となおも言葉を重ねようとして、筆者は自分が無意識に「女性が建設現場で働くのに向いていない理由」を探そうとしているのに気が付いた。

……これが、“偏見”の根っこか。

「女性に危険な現場を任せて、ケガでもさせたらかわいそうじゃないか」的な理屈の源をたどっていくと、「そもそもなぜその配慮は女性に限定するのか?」という疑問に行き着く。いたわりや優しさの対象に性別は関係ないはず。そこに「女性だから〇〇できない」という偏見や思い込みがある。

籠田氏は筆者の動揺を見透かしたように、「『(女性に)やっぱり、クルマの運転って苦手ですか?』というのがありましたよね」と言った。女性の運転技量が男性よりも劣るかのごとき表現が、まさに女性蔑視だとして炎上した某自動車メーカーのTwitterアンケートのことである。

「ああいう『女性はやっぱり運動神経がないよね』みたいな思い込みは、口に出すか出さないかにかかわらず、いまも根強くあると思う。たしかに、ベテランの職人さんは本当に忍者のようにどんな場所でもスイスイ歩くし、わたしの父も忍者体質で、階段をのぼる際もまったく音を立てなかったもの。でもね、慣れないうちは男も女も関係なく、慣れないものなんですよ」

「安全についてもトレーニングを受けながら知識を付け、ヒヤリハットを経験しながら学ぶ。それは男女関係なく人間なら、みな同じです。

さらに言えば、ベテランだから安全かというとそうでもない。『ハシゴは降り際に気を付けろ』とはよく言われますが、ベテランでも気を抜いている時ほどハシゴから落ちるものです。その意味で女性は、まだまだ数が少ないし慣れていないから、知識を付けるための時間も必要。トレーニングや体験の場が必要だと思っています」

けんちくけんせつ女学校」設立はそんな女性のスキル向上のためでもある。女性に“武器”を授けて男性とフラットな立場になれば、建設業で活躍できる女性はもっともっと増えていく。

「人との協業は、達成感がある。なにもないところから形をつくっていくのは多くの人が楽しいと感じるはず」と語る籠田氏。モノづくりの素晴らしさに性差も年齢差も壁はないというのが持論である。冒頭の「男の人が『かっこいい』と思うことを、女の人だって『かっこいい』って思うんですよ」発言は、この文脈で発されたものなのだ。

しかし彼女は、女性の建設業進出”だけ”を主張したいわけではない――。

 

 
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「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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