「みんなが建設パーソンになる社会へ」ゼムケンサービス代表・籠田淳子氏が夢見る女性活躍の“先”の景色【後編】

「モノづくりの素晴らしさに性差も年齢差も壁はない」と語るゼムケンサービス代表の籠田淳子氏。
建設業における女性活躍の先に、彼女が夢見る未来とは――?
写真/編集部、有限会社ゼムケンサービス
女性もいろいろ、男性もいろいろ
『つちのこもりた』の目次を指しながら苦笑する籠田氏。
「『キンタマ持ってこーい!』の項目は、わたしが最近、女子学生たちを現場に連れていった時に言われたエピソードなんです。ふつうにびっくりしますよね。キンタマとは、『下げ振り』の符丁(合言葉、隠語)です。「下げ振り」って言えばいいんですけれど、現場の親方はちょっと若い女子学生が来たものだから、ヘンな格好をつけたのか、現場の若い男の子に『キヨシ、お前のキンタマ持ってこい』なんて言ったんです。そのキヨシくんも嫌ですよね。若い女子の前でそんなこと言われて、ぶらぶらと下げ振りを持っていくのも……」
この現場の親方のような諸言動の根底にあるのは「ちょっと冗談で場を盛り上げよう、笑わせよう」というサービス精神である(もちろん、相手が喜んでいるかどうかは別問題)。そのサービス精神を発揮してしまうのも男性だし、恥ずかしい思いをしながら持ってこさせられるのも男性だ。
これで「建設業界は男性社会」だと言い切っていいものなのだろうか? 籠田氏は同じ性別でも「思考の志向」があると語る。
「『女性を十把一絡げにしないでください』と言われることもあるんですけれど、それはたしかにそうです。結婚して寿退社するのも個人の自由だし、それはそれで結構。男性も女性も多様性があります。女性だって極端に分ければ『結婚している・していない』、『子供がいる・いない』、『反対されたけれど建設業界へ進んだ・父や兄が建設業界で活躍している」など……。その違いによって、働く女性のマインドそのものが違います。
世代で見ても、いまの若い子たちには多様性があって、熱い心を持ったガテン系みたいな子たちもいるし、なにを考えているのか分からなくて『どこに感情のスイッチがあるのかな?』と感じる子だっている。また建設業は理系寄りだと言われているんですけれど、文系・理系のどちらにも向いている要素がある。これも、ひとつの多様性です。
建設現場ではチーム一丸となって取り組むのは間違いないんですけれど、かたや一人ひとりがやるべきこともすごく多い。それぞれの個性を前提にしたシステムができているので、そこにいる人の個性は尊重されるはずなんですよ」
この世界には、ジェンダー・ギャップとジェネレーション・ギャップがある。それを踏まえた上で籠田氏が重視しているのは、ダイバーシティ(多様性)の尊重なのだ。

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