メディア掲載情報 インタビュー/ヒューマンタッチ社長・高本和幸氏/建設人材市場の現状は 日刊建設工業新聞(2017.7.18)

~以下、掲載記事より転載

◇若い世代にもっとアピールを/社内制度改革の並行実施も不可欠

労働力人口が右肩下がりの状況にある中、産業間・企業間の人材確保競争が激化の一途をたどっている。 ベテランに長く活躍してもらいながら、将来を担う若手をどう採用し育てていくか-。 この経営課題に対して各社は知恵を絞り、施策を打ち続けている。 人材関連事業を展開するヒューマンタッチ(東京都新宿区)の髙本和幸社長に、建設人材市場の現状と見通しを聞いた。

--建設業界の人材市場をどう見る。

「1990年代後半から続いた建設投資の縮小を背景に、建設業界では多くの企業が採用を手控える状況が続いた。 こうした動きは結果的に、現在直面している技術者の高齢化や人数の不足につながっている。 震災復興や2020年東京五輪の開催決定などにより、建設業界を取り巻く事業環境は一変したものの、急激な環境の変化に人材確保・育成が追い付かなくなっている」

「2014年頃から建設技術者の人材市場では、『異業界からの転職』が『業界内での転職』を上回る状況になっている。 優秀な人材を確保したいという各社の取り組み姿勢が見て取れる。ただ若年人材の採用は、新卒世代の層を中心に苦戦を強いられている。業界や仕事に対する誤解、理解不足という側面もあるだろう。 ただ仮囲いの中で何が行われているのか分からない、仕事がイメージできないという問いに、対応できていない部分もあるのではないか。 仕事が具体的にイメージできるように積極的に情報を発信し、中学生や高校生などより若い世代に対して建築学科や土木学科への進学を促す取り組みが大切だと感じている」

--人材事業を展開する上での課題は。

「当社が行っている建設技術者の転職サポート成功数は、16年度実績で前年比14%増だった。
一方、ハローワークを通じた建設技術者の転職は減少しており、建設業界は失業しなくても次が決まるという傾向が顕著に出ている。
当社に登録している建設技術者にアンケート(回答人数316人)をしたところ、最も多かった転職理由は『給与を上げたい』(46%)で、それに続くのは仕事内容(29%)やキャリアアップ(27%)の順だった」

「上場企業の業績は過去最高益を更新するなど確かに好調といえる。だが同じ業界でも中堅・中小企業は依然として厳しい状況にある。 採用活動にも苦戦し、求職者に対して自社で魅力を伝え切れない、結果的に採用できないといった悩みを抱えている。 地域差はあるが、市場環境は比較的良好だ。しかし資格を持った技術者がおらず、仕事があっても受注できないという企業は多い。 超売り手市場の中で求職者側に立てばより魅力的な情報を提供すること、企業側に立てば他社との違いを引き出すことが、人材事業には求められている」

--人材を求める企業にとって必要なことは。

「給与面で言えば、超売り手市場だからといって採用時の賃金を引き上げれば、社内のバランスが崩れてしまう。 会社自体の人事制度や評価制度を見直し、今後に備える必要があるだろう。 採用、育成、定着という人材に関する取り組みでトータルサービスの提供を考えている。 東京五輪後も、現在先送りされているプロジェクトの具体化、維持修繕需要の増加などで技術者を必要とする環境は変わらないだろう。 5年先、10年先を見据えて採用ができる土壌を作ることが重要なのではないか」

--人材事業を展開する上でのポイントを。

「約30万人といわれる建設技術者の約31%は55歳以上で、向こう10年間で退職時期を迎える。 この割合は製造業で約13%、IT関連では約8%であり、建設業界は他産業に比べ極端に高い。 需要予測を考慮し年齢構成が変わらなければ、建設業界の人材不足はより深刻化する。 有資格者のマッチングにどう貢献するか、資格取得の支援をどれだけ行えるかが人材事業のポイントになる。 国、建設業界と共に人材関連業界も多様な取り組みが求められるようになる」
「人材不足は建設業に限った話ではない。問題意識を持った企業、経営者は多いと思う。 求職者も処遇や仕事内容に対する目がより厳しくなるだろう。 人工知能(AI)を活用した求人・求職マッチング精度の向上など、採用、育成、定着の各段階でより良いサービスを提供することがわれわれには求められている」。


□問われる改革の本気度□

建設業の事業活動に不可欠な技術者の不足は深刻な状況が続く。

厚生労働省がまとめている「一般職業紹介状況」調査で、建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は4月時点で4.92倍。前年同月の数値を23カ月連続で上回っている。

有効求人倍率が高止まりしている一方で、建設業での仕事を求める「有効求職者数」は低調な状況が続く。産業間での人材確保競争が激化する環境下で、他産業に比べ給与や労働時間、休暇取得など、処遇面で劣勢に立たされる場合が多い建設業。 「きつい・汚い・危険」という3Kのイメージを払しょくする取り組みに力を注いでいるが、超売り手市場で状況を即座に一変させるのは困難と言える。

建設産業界が働き方改革にどう取り組み、大手から中堅、中小まで業界各社がどう実践していくのか。業界、企業の本気度が問われているといえそうだ。


<このレポートに関するお問い合わせ>
ヒューマンタッチ株式会社 ヒューマンタッチ総研担当
TEL:03-6872-1027 / E-mail:htsouken@athuman.com
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