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  • 素材NOW・カーリットホールディングス「色素増感太陽電池用電解液」

    【10ルクスの低照度でも発電可能/IoT時代の新電源に/循環型エネで災害時にも対応】

     

     化学品事業や産業用部材事業などを展開するカーリットホールディングスは、室内の照明や薄暗い場所でも発電可能な太陽光発電用の電解液を開発した。すべてのモノがインターネットにつながるIoT時代が到来している中、照明やディスプレー、センサー、通信機器などを固定電源につながなくても太陽光パネルで稼働させ続けられるため、「アイデア次第でさまざまな応用が可能で、まったく新しい建材などが生まれる可能性もあるのではないか」(R&Dセンター新材料技術研究所環境エネルギー研究所の須黒恭一所長)と期待する。

     

     今回、開発したのは、色素増感太陽電池用電解液。ハロゲンイオンを混ぜた液体で、透明導電ガラスにこの電解液を塗り、電極で挟み込むことで発電する。波長の長い室内照明の可視光を効率的に吸収するため、10ルクス程度の低照度でも発電可能な点が最大の特長だ。

     

     「発電出力当たりのコストが安い」(同)という点も大きな魅力。一般的なシリコン系太陽電池の2分の1から3分の1という。既に国内メーカー向けに電解液試作品を提供し、良好な評価結果を得ている。この技術はさまざまな形状の場所にも設置できるフレキシブル太陽電池パネルに適用可能だ。

     

     発電量は1ミリワット程度と低いものの、室内などの暗い照度でこそ高い能力を発揮し、太陽光ではむしろ発電効率が落ちる。センサーのオン・オフや文字を表示するディスプレーなどであれば十分な電力で電池交換が不要で充電池とセットにすればより多くの電力を必要とする機器でも稼働させられる。発電した電気で点灯した照明の光を使ってまた発電することも可能で、「電力の循環を生み出し、新たに外部から得る電力を最小に抑えられる」(同)。IoT化、ICT化が進み、すべてのモノに電力が必要な世界になりつつある中に、エネルギーの循環と省エネルギーを実現できる『エナジーハーベスティング技術』となる。

     

     活用方法はアイデア次第で広がる。室内で表示し続けるディスプレーや執務用以外の空間演出のために点灯し続ける照明などの電源といった使い方のほか、IoT化が広がる中でさまざまなモノに設置されるセンサーや通信機器の電源としても活用できる可能性がある。IoT化が進む建設現場でも、電源の確保が難しい通信機器用の電源として活躍しそうだ。

     

     室内の壁面に太陽光発電パネルを貼れば、これまで電源の確保が支障となって実現できなかった新しい空間を創出するきっかけにもなる。多数・多様な形態の照明を必要とするデパートなどでの活用も想定できる。充電池とセットにすれば携帯電話の充電も可能なため、災害時の電源確保という観点でも注目される可能性が高い。発電容量の小ささをカバーするために充電池が必要になるという課題も「国内有力メーカーとともに超小型の電池との組み合わせも検討中」(同)と明かす。また、「官公庁にもエナジーハーベスティング技術をPRできるよう準備を進めている」(同)という。

     

     電解液の製造には、厳密に湿度をコントロールしたドライルームで作業する必要があった。この点が製造コストの面で量産段階の課題になるため、「工程を改良し、一般の部屋でも製造可能な技術を開発した」(同)と量産技術の準備も着実に進めている。

     

     「製品化の一歩手前。需要に応じて生産できる体制を整えつつある」(同)という状況だ。室内の照明で発電し、自ら点灯した照明でまた発電するという循環型エネルギーを実現するまったく新しい電源が世の中に誕生する日は近い。

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    掲載日: 2019年8月9日 | presented by 建設通信新聞

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