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  • 連載・次世代建設経営戦略研究講座、集中連載(5)~令和の日本はストック利活用による経済発展の時代~/寄稿/次世代建設産業モデル研究所 所長 五十嵐 健氏

    【中古不動産市場整備が経済活性化のエンジンに/BIMクラウドのエビデンスが社会の信頼感醸成】

     

     日本はこの半世紀、経済の成長を促進するために高速道路網や港湾・空港などの整備を進め、現在ようやくその補強も含めた計画が終了を迎えている。

     

     5G(第5世代移動通信システム)時代にその成果を活用した経済発展のエンジンとして期待されるのが不動産業や金融産業である。ここで第3回に紹介したデジタルデータによる建設産業の経済連携イメージの図を思い出していただきたい。図の右側には不動産、金融、物流、文化・観光などの産業が並び、左には国土強靱化、防災ネットワーク、交通インフラ、地域振興など、建設業に期待される整備役割が並んでいる。

     

     現在の建設産業の市場活性化を支えているのは物流や文化・観光などの産業だが、こうした産業の発展は、昨年の講座で述べたように4G時代の情報革命によって、モノや人の移動コストが低下し提供するコンテンツの質が向上することにより拡大した。高速道路をみても、道路網の整備が完了した現在その経済効果は大きく、商品の物流コストを引き下げ、時間を短縮することにより経済活動の拡大に寄与している。

     

     これに対し5G時代の到来により拡大が期待されるのが不動産や金融の分野である。われわれは建設プロジェクトにばかり目が向いているが、つくられた後の施設は不動産として利活用される。それは建築施設だけでなく道路や電力、上下水道施設なども同様で、欧米ではこれを総合してBuilt Environments(構造物環境)と呼んでいることを述べた。

     

     米国やシンガポールでは、近年そのデータを使って可視化することにより、施設の利活用や取引を拡大することを考えている。

     

     欧米先進国は、すでに産業革命による経済発展期を終え、成熟期に入っている。そこで進められている金融や不動産系のブロックチェーン整備は新たな産業インフラの整備であり、そのエンジンとなるのが5Gの技術革新である。

     

     日本でも今の不動産事業はこの方向に進んでいる。建設産業がつくり出した構造物は不動産資産として不動産業が利活用することになるが、2017年のその規模は2600兆円で、不動産業の産業規模は売上げ43.4兆円、GDPは61.8兆円で建設産業と同様の規模である。こうしたインフラの利活用のためにはBIM/CIMクラウドプラットフォーム構築による信頼性が重要になる。

     

     5G時代には、衛星からの画像データを基に建物形状をビジュアル化し、これにテナント情報や維持管理の情報を統合することでビルの価値情報が瞬時に可視化できるようになる。これに駅や学校、商業施設の集積など周囲の情報を重ね合わせれば、客観的にビルの価値を算定することが可能になる。

     

     日本でも最近、賃貸物件の紹介にスマホを使って情報を提供する企業が現れたが、世界企業の施設戦略では、施設立地を考える検討に現実にこうした情報が活用されている。大規模な施設になれば、その賃貸や売買の際に改修工事を伴うことが多い。不動産市場が活性化することで、定期的な改修や機能更新の工事も増加する。ゼロサム経済のもとで日本の建設産業にとって、この分野は海外事業とともに貴重な市場拡大分野である。そのため海外で進む都市&建築情報デジタル化の動きを先取りし、自社のビジネスモデルの中にどう取り込むかが建設産業発展の決め手になるだろう。

     

     一方、不動産事業者にとっても、それによって不動産価値が上がり、収益が向上するだけではない。所有不動産の情報をデジタルクラウドに蓄積することにより、ファシリティーマネジメントやビル管理業務の効率化・高精度化につながり、さらに決算業務や新規プロジェクトの企画に活用できれば、不動産業務全体の生産性向上にもなる。

     

     こうした施設のデジタル情報の蓄積が進むことで、建設産業と不動産業の生産性向上にWin-Winの好循環が生まれ、建設系産業全体の活性化につながる。これは、まさにテレビやWEBサイトを使った商品販売から始まった近年の流通産業の発展に通じるところがある。そのためには、新築施設のBIM化から始めると言う現在の日本の建設産業のリテラシーを捨て去り、既存施設のデジタル化から始めるという発想の大きな転換が必要ではないだろうか。

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    掲載日: 2020年5月13日 | presented by 建設通信新聞

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