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省人化、生産性向上に期待/安全性など基準構築が必要/日建連・ロボット調査
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【費用対効果踏まえ産学官連携も視野】
日本建設業連合会(山内隆司会長)の土木工事技術委員会土木情報技術部会情報利用技術専門部会が実施した「建設業のためのロボットに関する調査」を通じ、ロボット技術の普及に向けた開発、法令面、開発体制などの課題が浮き彫りとなった。ロボット技術は省人化を実現する上では1つのツールでしかないが、基準や開発・利用の方向性が明確化し最新の情報通信技術と連携していくことで、生産性向上への中核的貢献が期待される。
これまでのロボット技術は、単純な繰り返し作業で優れた能力を発揮するため、技術導入に伴って生産環境を適用(作業を代替)させやすい少品種大量生産体制の工場などで運用が進み、製造業を中心に労働生産性を飛躍的に高めてきた。
建設業は一品受注生産という性質上、工場と同じような適用は難しいとされてきたが、センシング技術やAI(人工知能)を始めとする近年の技術革新によって工事現場のロボット化に対する可能性や見方が変化し、技術開発は再び熱を帯びている。
今回の調査では、ロボットを「自動かつ自律可能な機械」と定義した上で、建設業のロボットに関する技術開発、活用事例のほか、技術水準と導入実績などを整理した。ロボットに特化した調査は建設業団体で初めてとなる。
対象は29件で、画像認識技術や3次元空間情報を取得する光学式のレーザーセンサー、ステレオカメラなどのセンシング技術と自動制御技術を掛け合わせたものが多い。
工種は土工(9件)、運搬工(8件)、清掃工(4件)、コンクリート工(2件)、その他(6件)と多岐にわたる。土工は既に開発が進んでいる建設機械をベースとした自動化が大半を占める。それ以外の工種についてはベースとなる機械が存在しないため、作業内容を踏まえて専用ロボットを新たに開発している。
躯体工事などの資材運搬、スイーパー掃除機への高圧洗浄機の搭載、コンクリート打設後のこて仕上げ、墨出し、耐火被覆吹き付け、鉄筋結束、内装材仕上げなどのロボットがあり、土工のロボット化を含め、いずれも省人化に大きく役立つ。
建設業の作業環境を踏まえ、今後は天候などの外的要因や過酷な現場条件に適用できる耐久性・走行性・柔軟性を備えた全天候型ロボット技術の確立が不可欠とみている。
関係法令・規制の観点から現場へのロボット導入・普及の課題も検証した。組立・搬送ロボット、溶接ロボットなどの産業(工業)用ロボットでは、労働安全衛生法などに基づいて安全基準や技術指針を整備、法的な裏付けが開発や利用の推進につながっている。
一方、建設ロボットには、産業用ロボットのような法令上の規定は存在しない。そのため、工事現場でロボットや自動化技術を活用する場合は、労働基準監督署などの関係機関と協議しながら、仕様、安全性などを考慮した現場ごとの独自ルールを設定しなければならない。
ルール基準の不明確さは、ロボット普及の障害になり得る。例えば、対人への危険性が低いロボットであっても、関係機関との協議の過程で作業上の安全性が過小評価されれば、現場従事者との距離を必要以上に確保しなければならず、ロボットの活用効果は限定されてしまう。生産性の向上を通じ、ロボットの実効性を証明することで普及が加速していく以上、法令・基準制定の必要性は高まっている。
また、建設ロボットの技術開発は個社で取り組んでいるが、莫大な開発投資、費用対効果が進捗の足かせになっている。開発分野の重複回避、技術基準の標準化・共通化による開発・運用コストの削減などに向け、企業間の協調領域を明確化し、同業者だけでなく、産学官連携も視野に入れた技術開発体制の構築も求められている。
【DXとの組合わせも】
情報利用技術専門部会の佐藤郁専門部会長は建設業の健全な発展に向け、ロボット技術の開発・利用に関する現状を把握し、発信することの意義は小さくないとの考えを示す。また、コロナ禍の影響で生活様式の変化が求められる中、「オンラインによる情報共有という文化が土木に根付く機会になり得る」とし、ロボット技術に限らず、生産性向上に関する各種施策が進むことで「次の展開が見えてくる」と加える。
土木情報技術部会の今石尚部会長は、「担い手の確保・育成を推進する上でも生産性向上は重要」と強調する。ただ、「ロボットでいきなり生産性を高めるのは難しいので、まずはICTの活用だろう」との認識を示す。ロボット技術や自動化技術、関連市場などの成熟度合いを踏まえつつ「個社による開発から、業界全体のリソースを集中させてロボット化を推進する態勢へと移行すべき」とみる。
両氏を始め、土木情報技術部会では「ロボット技術も土木の生産性向上の方策の1つ」との共通認識のもと、今回の取材で活用した「ZOOM」によるウェブ会議などの足下の取り組みと、デジタルトランスフォーメーション(DX)の概念とデジタルツイン、5Gなどの情報通信技術を組み合わせながら、「土木のビジネスモデルを徐々に変えていければ」(今石部会長)と先を見据える。
残り50%掲載日: 2020年6月3日 | presented by 建設通信新聞