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連載・都内鉄道ネットワーク(中)
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【蒲蒲線は3セク設立準備/空港需要の増大に対応/既設インフラの活用も】
交通政策審議会(国土交通相の諮問機関)の2016年4月答申に盛り込まれた6路線のうち、2路線が羽田空港関連の路線となっている。JR東日本による羽田空港アクセス線と、新空港線「蒲蒲線(蒲田~京急蒲田)」の2路線だ。羽田の国際化など拡張に伴い、空港の利用者や電車の乗降者は増加の一途をたどっている。
京浜急行電鉄がまとめた空港周辺主要駅の過去10年間(08-17年度)の1日平均乗降者数の推移を見ると、品川駅は10年間で12.1%増の28万4888人、京急蒲田駅は25.5%増の6万1746人など、軒並み右肩上がりだ。特に、10年度に開業した羽田空港国際線ビル駅は8年間で54.5%増の2万6036人と大きく伸びた。
自動車でのアクセスも増え、空港内の駐車場不足も深刻な問題となっている。既設の立体駐車場を増床する異例の工事が行われるほどだ。羽田空港をめぐっては、増大する需要に対して、交通インフラの充実が追いついていないという側面もある。
JR東日本の深澤祐二社長は7月の会見で、羽田空港アクセス線について「環境アセスメントに3年、工事に7年かかる。仮に10年後の開業を目指すには、年内にスキームを固める必要がある。3ルート同時に進めるか、あるいは順次取り組むかは、これから詰めていく」との考えを示した。これを受けて石井啓一国交相は、「関係者間の検討状況を踏まえ、事業計画の具体化に向けて専門的観点からアドバイスするなど、必要な協力はする」と応じた。
実際の開業時期などは流動的だが、JR東日本が羽田空港アクセス線の整備を表明したことで今後、グループ会社の東京モノレールなども含め、ライバル路線の競争意欲が刺激されそうだ。
一方の蒲蒲線は、約800m離れたJR・東急蒲田駅と京急蒲田駅をつなぐ構想で、地元の大田区が検討に着手したのは30年以上も前にさかのぼる。東急多摩川線矢口渡駅付近から多摩川線を地下化し、東急蒲田地下駅、京急蒲田地下駅を通って大鳥居駅の手前で京急空港線に乗り入れる構想となっている。ただ、これまで東急と京急で異なる軌間(線路の幅)が大きな検討課題となってきた。
蒲蒲線の概要
このため当面は第1期計画として、まず東急蒲田駅と京急蒲田駅との接続を優先することにした。東急多摩川線を京急蒲田駅まで延ばし、そこで京急空港線に乗り換えるルートだ。整備には上下分離方式を採用し、営業主体として東急電鉄を想定している。
構想は熟しつつあり、区は17年度から予算を計上し、整備主体となる第三セクターの設立準備を進めている。現在、関係者間で費用負担などについて、合意形成に向けた議論を重ねている段階だ。協議がまとまり次第、第3セクターの設立を進める見通し。
鉄道ネットワークの充実に向けては、既にあるインフラをどのように接続して価値を高めるか、という道を探るのが定石となっている。JR東日本による羽田空港アクセス線は、ルートの一部で貨物線路を活用する。地下も含めて過密状態となっている都心部では、既設インフラの活用や用途転換を目指す動きが複数ある。
残り50%掲載日: 2018年8月27日 | presented by 建設通信新聞