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  • 建コン協地方ブロック意見交換会/問われる危機意識の共有

    【長時間労働是正「待ったなし」/官民協働、フル装備で達成を】

     

     7月に中部地区からスタートした建設コンサルタンツ協会(村田和夫会長)の2018年度地方ブロック意見交換会は、19年4月から施行される働き方改革関連法を見据え、法令順守の観点からも長時間労働の是正は「待ったなし」だとして、受発注者双方の立場から実効ある取り組み強化の必要を確認する場となった。7月豪雨災害の影響により延期となった中国、四国両地区を除いて、10日の関東地区で一区切りを迎えた今年度の意見交換会で何が問われたのか、「担い手確保・育成のための環境整備」をめぐる議論を中心にまとめた。 皮切りとなった7月10日の中部地区で国土交通省中部地方整備局の塚原浩一局長(当時、現国交省水管理・国土保全局長)は「発注者もいまのままではブラック発注者になってしまう。われわれもまさに同じ状況であり、相当の覚悟をもって取り組まなければいけない」と強調した。

     

     働き方改革を前面に打ち出し、「完全週休2日・深夜残業ゼロの実現」をそのスローガンに掲げた今回の意見交換会で協会が問い掛けたのは、まさにこうした「危機感の共有」だったといえる。国内市場の約8割を公共分野が占める建設コンサルタントにとって、就業環境の改善には公的発注機関の理解と実態に即した対応が不可欠であるからだ。

     

     今回、協会が提示したデータを見ても年度末に圧倒的に集中する納期や突発的な作業依頼が深夜残業や休日出勤を強いる要因となっている実態が如実に表れた。

     

     業務システム委員会構成会社16社を対象に調査した17年度業務の最終的な変更後納期は、3月が67.3%と圧倒的に多く、2月の15.3%を合わせると8割を超える。

     

     他方、売上100億円以上の会員会社16社を対象とした月別残業時間の実態調査も3月が最も多く、1人当たり残業時間は16社平均で63時間、平均が最大の社は92時間に達する。これは平均値であり、個人レベルではさらに突出した残業時間の技術者が存在することを意味する。

     

     来年4月から施行される改正労働基準法では5年間の猶予期間がある建設業と違い、建設技術サービス業に属する建設コンサルタントには罰則規定のある残業時間上限規制が適用される。すべての社員の残業時間を通常では月45時間以下、特例でも年度末の2、3月を平均80時間以下に抑えることが順法上求められるが、現状では極めて困難と言わざるを得ない。

     

     「4月発注でも9月発注でも変更後納期は3月に集中する」と、早期発注が納期の分散につながらない実態も示した上で、協会は3月納期を30%以下、第4四半期納期は50%以下まで分散しないと法律は守れないと指摘。そのためには標準履行期間の確保がまず第一ステップで、極端な納期の集中はこれで解消できる。さらに前倒し発注と2カ年国債を活用することで残業時間も分散できると提起した。

     

     突発的な作業依頼も深夜残業や休日出勤をもたらす。月曜日を仕事の依頼期限としない「マンデー・ノーピリオド」や金曜日に仕事を依頼しない「フライデー・ノーリクエスト」、水曜日は定時に帰宅する「ウェンズデー・ホーム」などのウィークリー・スタンスは、各地整によって取り組みにバラツキはあるが、その必要性を継続して訴え続けることで確実に浸透。地方自治体にも取り組みが広がっていることが確認できた。

     

     年間の1人当たりの残業時間を減らすためには人そのものを増やすことも必要だ。ICTやBIM/CIMの活用などによる生産性の向上や効率化も欠かせない。そのためには企業経営の安定と処遇改善が求められるだけに、継続的な事業量の確保と技術者単価のアップが不可欠となる。まさに「フル装備」で当たらないと実現できないわけだ。

     

     村田会長は各地区での冒頭のあいさつで「働き方改革は待ったなし」だと強調する一方、自助努力だけでは限界があるとして「生産性の向上や品質確保と一体となった働き方改革」を受発注者協働で進めていく必要性を繰り返し訴えた。その推進力となるのは「危機感」であり、それを自分ごととして「共有」する意識だろう。ウィークリー・スタンスの実施状況で中部地整が断トツなのは「従来のやり方や意識では立ち行かなくなるのは明白だ」と強い危機感を表するトップの姿勢と無関係ではない。加速度的に進展するインフラ老朽化や頻発・激甚化する自然災害への対応など、従前に増して建設コンサルタントが果たす役割が増す中で、その力を十全に発揮していくための環境整備は急務だ。

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    掲載日: 2018年9月14日 | presented by 建設通信新聞

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