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  • 現場から・八ッ場ダム本体建設工事

    【堤体打設9割完了 全容現す/多様なコンクリ“縫い”合わせる】

     

     国土交通省関東地方整備局が群馬県長野原町に、清水建設・鉄建建設・IHIインフラシステム異工種JVの施工で建設を進めている八ッ場ダム。本格的に堤体のコンクリート打設を開始してから約2年、驚異のスピード施工で既に9割程度を打ち終え、堤高は110mに達した。名勝吾妻峡の紅葉に包まれ、大詰めを迎えている建設現場を訪ねた。

     

     カスリーン台風による甚大な被害を受け、旧建設省がダム事業の調査に着手したのは1952年。難航する地元交渉、近年では政権交代に伴う事業中止など、紆余(うよ)曲折を経た八ッ場ダムはようやく最終局面に入った。

     

     清水建設JVが手掛ける本体工事では、大幅な工期短縮を実現する「巡航RCD工法」を採用した。土砂のようにパサパサしたスランプゼロの堤体内部用コンクリートを先行打設し、打設効率の低い有スランプの外部用コンクリは独立・後行打設する。これにより高い打設効率を維持し、日平均打設時間は従来のRCD工法に比べ約3時間増えた。

     

     内部コンクリはダンプで運搬後、ブルドーザーで敷きならし、振動ローラーなどで締め固める。この現場では、最高で月6万m3の打設を記録した。機械化の一方で、表面は人の手で整えるなどして品質確保に万全を期した。

     

     また、クレーンやバッチャープラントなどコンクリート打設・製造設備を大型化。標準案に比べ、最大の搬送能力を2.4倍、製造能力を2倍に高めた。監査廊やエレベーターシャフト、張り出し部などにはプレキャストを活用し、打設休止日数を短縮した。

     

     1つが350tに上る常用洪水吐設備は、堤体上流側に設置した大型構台上であらかじめ組み立て、堤体が所定の高さに達したタイミングで引き込んだ。この工夫により、打設休止日数を72日から11日へと大幅に減らせた。

     

     原石山から採取した骨材は、全長9㎞に及ぶベルトコンベヤーでダムサイトに運ぶ。ダンプ輸送をやめ、土ぼこりや騒音を抑制した。4種類ある骨材の粒径判別には画像処理技術を導入。この試みは、内閣府の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)を活用した国交省のプロジェクトにも採択されている。

     

     素人目にはコンクリートをひたすら打つと思われがちな重力式ダムだが、清水建設JVの平塚毅統括所長は「実は非常に繊細で、機能に応じてたくさんの種類のコンクリートを使い分けている」と話す。堤体の内部・外部、プレキャスト周りなどでそれぞれ異なり、それらを「混然一体に“縫い”合わせている」

     

     さらに、目には見えないものの、岩盤内に水が浸透しないよう、セメントミルクを注入して亀裂を埋めている。地中に張り巡らされたグラウトカーテンの深さは、ダム本体の高さに匹敵するという。

     

     現場に従事する作業員はピーク時600人、現在も500人ほどが昼夜交代で24時間稼働している。八ッ場ダムは、かつてないほど工事中から注目を集めてきた建造物で、毎日多くの見学者が訪れる。建設業界のみならず、世間一般からの関心も非常に高い。

     

     「もともとあった自然を壊してしまったのは確か。しかし、人々の安全・安心も守れる新たな自然が生まれ、多くの人に愛されることを願っている」。平塚統括所長はこんな思いを抱きながら、きょうも現場の指揮を執る。

     

     八ッ場ダムは、来春の本体完成、来秋の試験湛水開始を目指している。

     

    〈ダム諸元〉

    ▽型式=重力式コンクリートダム

    ▽堤高=116m

    ▽堤頂長=290.8m

    ▽堤体積=約100万m3

    ▽流域面積=711.4km2

    ▽総貯水容量=1億0750万m3

    ▽有効貯水量=9000万m3

    ▽洪水調節容量=6500万m3

    ▽目的=洪水調節、新規都市用水の供給、流水の正常な機能の維持、発電

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    掲載日: 2018年11月16日 | presented by 建設通信新聞

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