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  • 急増するS造/いまが正念場/構造変更 ファブ業界が懸念/材料、工法、工程調整など提案

     人手不足を主要因として近年、急増してきた鉄骨造の市場が正念場を迎えている。S造建築物における柱などの主要鋼材となる角形鋼管(コラム)の納期が延びていることを理由に、他構造への揺り戻しが始まりかねない状況だからだ。S造建築のファブリケーターは、盛り上がる需要に水を差さないよう他のS造工法の提案などに力を入れている。

     

     国土交通省の建築着工統計で非木造建築物の着工床面積に占める構造別割合を見ると、2011年度のRC造の割合は39.4%と4割に達する勢いをみせており、07年度に60.9%に達していたS造は11年度に56.2%にまで減った。ところが、12年度以降はRC造が減り続け、17年度には29.5%と3割を切った。一方、S造は右肩上がりで増え、17年度に65.6%となった。

     

     この要因は、東日本大震災以降の建設需要の高まりの中で人手不足が懸念されたことから、多数の技能者を必要とするRC造からS造への計画変更が進んだためとされている。S造も、溶接工不足などが指摘されつつも、増加傾向は続き、18年度に入ってからは鉄骨を止めるための高力ボルト不足の問題も表面化している。

     

     さらに深刻とされるのが、大口径のコラム柱で、首都圏の物流施設を施工する準大手ゼネコンの現場所長は「大口径コラムは納期が1年待ち」と調達部から聞き、着工の前から高力ボルトとコラムの確保に追われた。ある大手エンジニアリング会社も「1年とは言わないが、6-8カ月待ち」と認める。

     

     ファブリケーター側が懸念するのは、こうした資材納期の延びが建築構造の変更につながることだ。全国の中小ファブリケーターで構成する団体の幹部は、6月の時点で「仕事量が多くて大変だが、迷惑をかけないよう消化したい。せっかくのS造化の流れが、またRC造に戻っては困る」と懸念を示していた。現に、前出の準大手ゼネコンでは、物流施設の営業でRCとSのハイブリッド工法を「コスト競争力が高い」と売り込んでいる。PC梁の採用やCFTの採用など、S造以外の研究開発も進んでいる。別の準大手ゼネコンの設計担当幹部は、「いま、S造からほかの構造に転換する分岐点にある」と指摘し、かつて研究したことがあるRC造オフィスの再研究も検討しているという。

     

     こうしたS造の構造変更の流れについて、大手ファブリケーターの幹部は「いま『できない』と言えば、構造自体を変えられて需要を失う」と強い危機感を示す。ただ、コラムを急に増産することは難しいため、設計者やデベロッパーに対して「高層建築物の中間階までを4面ボックス柱にするなど、さまざまな提案をしている」と、別の鉄骨材の使用や工程の調整などを求めている。

     

     ただ、現在のS造化は生産性向上、働き方改革の流れの中で発生した潮流であり、「生産性はS造が圧倒的に高い」(準大手ゼネコン設計担当幹部)という最大のメリットを踏まえ、「S造の流れが続く可能性はある」(同)との声もある。大阪での万博開催も決まり、20年夏季東京五輪後の需要も見え始めている中、S造を建築物の主構造とする流れが今後も続くかは、いまの需要への対応がかぎを握っている。

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    掲載日: 2018年12月6日 | presented by 建設通信新聞

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