建設技術者向けNEWS
建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!
-
研究室訪問/日本工業大学環境共生研究室・樋口佳樹准教授
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>◇独自アプローチでエコ建築追求/環境配慮型衛生システム実用化へ
日本工業大学の樋口佳樹准教授の環境共生研究室は、住む人の快適性や健康を確保しながら地球環境に配慮した建物を実現するため、「建築計画」と「建築環境工学」を結びつけた実践的な教育を行っている。従来の建築環境工学の枠を超え、水浄化システムやコンポストトイレなど生活排水、排せつ物を循環利用するシステムの実用化を目指しているのも同研究室の特徴だ。
「建物の温熱環境については研究者も多く、さまざまな知見が蓄積されている。一方、環境を考慮した給排水衛生システムの研究は、決して進んでいるとはいえず、エコ建築を極めるためには、排水を循環利用するシステムが不可欠だと思考していた」と、樋口准教授は研究の狙いを説明する。
大学では微生物を使った傾斜土槽方式の浄化システムの性能検証を行っている。傾斜土槽システムは、四電技術コンサルタント(高松市)の生地正人氏の開発品で、もともとは50センチ×1メートルの四角い発泡スチロール製の容器をつなぎ合わせているが、樋口准教授は竹管に変更して装置を組み立てた。
「調布市(東京都)のある住宅の設計で、非常に環境意識の高い建築主から台所排水を庭で使いたいと申し入れがあり、傾斜土槽システムを提案した。しかし、定格サイズの容器では隣地との間の敷地内にシステムが収まらず、加えて発泡スチロールが人工品ということもあり、自然素材の竹を使ってみることとした。排水の浄化効率を高めるには、一気に排水が流れず水がたまる場所が必要で、竹の節なら遮水壁と同じ役割を果たすことが可能。しかも、管径が細いため住宅密集地でもシステムを組み立てられる。ただ、竹で排水がきれいになるかどうかは分からず、そこで大学にモックアップをつくり、浄化実験を行った。結果として、竹管でも高い浄化性能が発揮されることを確認でき、11月に試験的に導入した。
傾斜土槽システムと並行して、水と電気を使わないコンポストトイレの性能実験も進行中。樋口研究室では、ここで生成された堆肥を肥料に野菜も栽培している。
コンポストトイレは市販品もあるが、その多くは、微生物を活性化させるためのかくはんと冬場の保温と換気に電気が使われている。
樋口准教授は、「市販品の多くは電気がないと快適に使えないのが実情。大学のコンポストトイレは、使用した後に人力でかくはんし、日射熱で煙突内に上昇気流を発生させる、いわゆるソーラーチムニーによる自然換気、さらには太陽熱による堆肥化槽の保温を実現し、微生物を活性化させている。自然換気でも、堆肥1キロ当たりに必要な換気量を十分確保できる」と説明する。
研究室の学生は日々、このトイレを使用し、浄化後の水質検査を行う。卒業生も、実験の進捗(しんちょく)が気になるらしく、定期的にOB・OGが訪ねてくるそうだ。
「私たちの研究はニッチな分野を扱っているけれど、ここで学んだことは、将来必ず生かせる場があると思う。研究室に所属するのは4年生の1年だけだが、卒業生同士が交流を深めて協力し合い、エコな社会づくりに貢献してくれることを期待している」。
(ひぐち・よしき)博士(工学)、1級建築士。1975年岐阜県生まれ。2000年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了、INAX入社。05年長谷川敬アトリエ入社、07年樋口佳樹暮らし環境設計設立、11年工学院大学で学位取得、12年日本工業大学准教授。
残り50%掲載日: 2018年12月19日 | presented by 日刊建設工業新聞