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  • 本音が業界と現場を変える/回想2018年/消滅する産業、業種の垣根/働き方改革の取組み加速

     2018年は、これまで建設産業界が主張してきた国土強靱化や防災・減災の必要性に対して、安倍政権が18年度第2次補正予算案、19年度予算案の編成で集中投資を行うことを明確に打ち出したことが、明るい話題となったことは間違いない。また働き方改革でも関連法が成立したことを受け、民間企業を含めすべての発注者に実施を求める「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」が改訂されるなど、政府・行政も支援を強化。これに応える形で、建設産業界も業種ごとに個別企業の働き方改革と生産性向上へ取り組み支援を加速させている。しかし急速な技術革新と生産性向上による新たな時代への対応を進めれば進めるほど、従来の枠組み、業種の垣根は消滅しつつある。

     

     18年の建設産業界にとって大きな出来事となったのが、「働き方改革関連法」の成立と、政府の外国人材受け入れ拡大に伴う「新たな在留資格創設」決定であることは間違いない。くしくも今夏、同時期のことだった。

     

     働き方改革については18年以前から建設産業界でも取り組みを始めていたが、19年4月から大手の設計事務所や建設コンサルタントに罰則付きの残業時間上限規制が適用されるほか、建設企業も24年4月からの適用が決まったことで、個別企業と各種業界で取り組みを加速している。

     

     ただ、具体的に週休2日や残業時間短縮に向けた残業規定など細部を議論すればするほど、働き方改革への不安が地方業界や中小企業から出始めたのもことしの特徴と言える。

     

     安倍政権と国土交通省が旗を振る「i―Construction」に伴う生産性向上と、週休2日などを柱とした働き方改革が議論の焦点となった今年度の全建ブロック会議では、「自助努力だけでは限界がある」としてさらなる公的支援拡充を求める声が広がった。

     

     現場の休日拡大を視野にした現場閉所や職人の交代制採用、さらに国交省肝いりの建設キャリアアップシステム導入とも合わせ、技能労働者に焦点が当たる施策に不満が出始めたのもことしだ。同じ元請けでも中小企業にとっては、働き方改革に理解のない地方自治体や中小建設コンサルタントからの土曜・日曜関係のない書類提出要求に疲弊する自社の技術者を守ることができず、外注の技能労働者の待遇だけを改善することに不満が高まった。

     

     日本建設業連合会など大手元請団体などでさざ波が立ったのが、外国人材受け入れ拡大だ。従来からの製造業などの要望を踏まえ、安倍政権は日本の成長戦略に外国人材の受け入れ拡大は必要不可欠だと判断、経済産業省は新在留資格法案が固まる前の7月に説明会を開き、業所管官庁と業種別業界・団体が連携していく必要性を訴えた。

     

     建設業界では当初から「現状の枠組みで技能労働者の処遇改善を含め現場の働き方改革を進めていることに影響は出ないか」といった声もあった。実際に建設作業を行う専門工事業からの外国人材受け入れ拡大要望は根強く、改正出入国管理法の成立を受け、新在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」を持つ外国人材が建設作業に従事するのは確実となった。

     

     一方、ことしは防災・減災の取り組みの重要性が再認識された一年だった。7月豪雨、台風21号、北海道胆振東部地震といった大規模な自然災害が相次ぎ、集中豪雨による土砂災害など各地で甚大な被害が生じた。

     

     政府は一連の災害を踏まえ、重点インフラの緊急点検を行い12月14日、「防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策」を公表した。18年度からの3年の緊急対策費用は事業費ベースで7兆円。国費ベースでは3兆円半ば。また、同時に国土強靱化基本計画も改定した。初年度の18年度は第2次補正予算を充てるほか、19、20年度は消費税対応にかかる「臨時・特別の措置」を活用する。

     

     国交省の19年度予算案も3カ年緊急対策2年目の強靱化投資額として7153億円上乗せした結果、公共事業関係費は15%増の5兆9663億円となった。

     

     今後国会に提出される今年度第2次補正予算案が来年2月にも成立すれば、実際の工事発注は4月から可能で、建設業界が強く求める発注と施工の平準化に大きく寄与することは確かだ。

     

     これまで土木市場は、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)といった技術革新に加え、フロントローディング採用やロット拡大などで発注規模の大型化の傾向が近年特に強まった。このため、中小企業が中心となる地方建設業界からは、中小向け発注案件が減少し経営悪化につながりかねないとの指摘も広まっていた。

     

     今回、地元中小建設業が受注できる防災・減災対応工事が3年限定とはいえ別枠で予算確保されることは、一定規模の受注確保につながりそうだ。

     

     全国ゼネコンでは、売り上げの多くを占める建築市場は最大市場である東京を中心にした首都圏、開発需要が底堅い札幌、リニア新幹線の大阪行きの起点になる名古屋、万博決定がプロジェクトを誘発する大阪、堅調な需要がある福岡など、東京五輪後も市場規模は一定程度見込めるとの判断が大勢を占めつつある。

     

     ただその一方で、急速な技術革新は外部との連携、いわゆるオープンイノベーションの進展、人口減少を見据えた建設生産システムの全面的見直しに伴う自動化と従来職種の統合、産業・業種や企業規模を超えた企業連携、M&A(企業の合併・買収)も進んだ。まさに産業構造の大転換が着実に進行すると同時に、これまでのさまざまな垣根も消えつつある。

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    掲載日: 2018年12月28日 | presented by 建設通信新聞

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