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  • 建設業界の平成/激動の30年、次代への課題は/変革の時代に重み増す役割

     平成最後の年の瀬を迎える。バブル崩壊と公共事業費の大幅削減といった冬の時代が続いた建設業だが、東日本大震災などの多発する自然災害を通じてインフラの社会的な役割が見直され、環境が大きく変化した。建設業は平成に何を学び、その教訓は新たな時代でどう生かされるのか。ゼネコントップの見方は-。

     

     「売上高が1兆円を超えたころに平成が始まった。絶頂期だった」。そう振り返るのは熊谷組の櫻野泰則社長。国内建設投資は1985年に50兆円を超え、その5年後には80兆円の大台に乗り、ゼネコン各社が急成長を遂げた。だが、平成に入って直面したバブル崩壊によって経営面で厳しい時期もあり「いくつかの山を越えた」(竹中工務店・宮下正裕社長)。

     

     「建設業にとって平成で一番大きな出来事は一般競争入札の導入だ」と指摘するのは安藤ハザマの福富正人社長。公共工事の入札契約制度で透明性の確保を求める機運が高まり、入札のメインが指名競争入札から一般競争入札にシフトしていった。一般競争入札の浸透は「建設業の受注の仕組みを大きく変えた」とする見方もある。

     

     公共工事に公平性をもたらした一般競争入札だが、2000年代には価格競争を逆手にとったダンピング受注が発生。過度な価格競争による工事品質の低下や下請へのしわ寄せが問題になった。技術者の自尊心を傷つける要因になっただけでなく、業績悪化による労働者離れを引き起こすなど、建設業にとって苦い教訓となった。

     

     09年7月の総選挙で「コンクリートから人へ」をスローガンに掲げた民主党が政権を奪取し、10年度の予算で公共事業費が大幅に削減された。08年秋のリーマンショックの影響で民間の建設投資も落ち込み、当時を振り返るゼネコン各社のトップは異口同音に「建設業にとって最もつらい時期だった」と話す。

     

     その後、11年3月に東日本大震災が発生。竹中土木の竹中康一社長は「震災を境に国土強靱(きょうじん)化に対する意識が高まった」と分析する。震災の翌年に起きた中央自動車道笹子トンネル天井板崩落事故では老朽化インフラの脆弱(ぜいじゃく)さが露呈し、「インフラは老朽化しており、それを維持しなくてはいけないということに社会が気づき始めた」(鉄建建設・伊藤泰司社長)きっかけになった。

     

     12年の自民・公明連立政権復活による国土強靱化への集中投資や震災復興、2020年東京五輪関連を起爆剤に建設投資は回復基調になったが、人手不足が次の課題として立ちはだかっている。ゼネコン各社はICT(情報通信技術)活用による生産性向上施策、働き方改革などを打ち出して現状打開策を模索。五洋建設の清水琢三社長は「安倍内閣成立以降の取り組みは建設業にとって将来大きな転換点になる」と見通し、戸田建設の今井雅則社長はこの状況を「建設業のパラダイムシフト」と表現する。東京五輪、大阪万博などの大規模イベントに向けた盛り上がりが高まる一方で、「地震リスクも年々高まっている。災害への備えが必要だ」(清水建設・井上和幸社長)と老朽化インフラ対策を急ぐ声もあり、建設業の役割は重みを増す。

     

     建設業はこの流れのまま新しい時代に移行できるのか。三井住友建設の新井英雄社長は「良い流れが来ている。この流れを逆戻りさせてはならない」と強調する。日本国土開発の朝倉健夫社長は「平成の一番大きな教訓として、同業のゼネコンの後を追っても先がないということを学んだ」と振り返り、「独自でいろいろなことを考えないと次の世代は成り立たない」と厳しい見方を示す。

     

     人工知能(AI)やロボットの普及により、新たな時代での大きな変革を予想する声は少なくない。大成建設の村田誉之社長は「職人がロボットを使いこなし、そのぶん職人がよりレベルの高い仕事をできるようになる」と見通す。大林組の蓮輪賢治社長は「建設技能工の多能工化、ロボットの導入などが進むことで生産性や施工プロセスの抜本的な変革が引き金となり、建設業の重層構造が成り立たなくなるのではないか」と大胆に予想する。

     

     飛島建設の乘京正弘社長は「得意分野は共有しつつ、業種・業界の壁が無くなってボーダーレスな時代になるのではないか」と建設業の業態を展望。フジタの奥村洋治社長は「平成の30年間の中で学んだことをいかに後世に伝えられるか、それが日本にとっても建設業にとっても非常に大きな意味を持つ」と指摘する。

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    掲載日: 2018年12月28日 | presented by 日刊建設工業新聞

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