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連載・建設産業・新時代の視座 No.4
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【交錯する糸(4)/供給過剰と支援 悩む二律背反/本音の先に見える地域企業の未来】
「平成」30年間のうち、失われた20年とも言われる市場縮小にあえいだ地方中小建設業界は、「供給過剰是正」と「企業再生・支援」という相反する政策を求め続けてきた。「競争激化最大の理由は供給過剰」→「是正のためには規制強化」→「強化されると多くの企業に影響」→「影響を緩和するためには支援策」→「支援の結果、供給過剰は継続」という堂々巡りに陥っていた。地方建設業界にとって、まさに「規制」と「緩和」はトレードオフの関係だった。
しかしいま、中小建設企業を取り巻く環境が大きく変わる中、経営者の意識も変わりつつある。
2018年11月。全国中小建設業協会中国地区意見交換会で全中建広島県支部の幹部は、国土交通省出席者に対し「(効率化を目的にした)i―Constructionとは逆行するかもしれないが」と前置きした上でこう切り出した。
「ICT建機なんかよりも人手だ。ウチじゃ対応できない。各地域に最低1社、体力・能力に秀でた企業の育成を考えていただきたい」
広島県内各地に深刻な被害をもたらした18年7月豪雨の災害対応で、小さな企業規模の非力さを正直に打ち明けた瞬間だった。
地域の中小企業が本音で語り始めたのは、日本の中小企業そのものがせっぱ詰まった局面に追い込まれているからだ。
17年10月の政府の未来投資会議で経済産業省が提示した、『今後10年間で70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者約245万人のうち約半数の127万人が後継者未定』『現状を放置すると、25年までの10年間累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDP(国内総生産)が失われる可能性がある』の試算は、その後の安倍政権の中小企業対策本格化を決定付けた。
日本国内企業数の99.7%を占め、雇用で7割、付加価値額でも半数を超える中小企業の経営者年齢は95年から15年までの20年間で47歳から67歳まで上昇。高齢化と事業承継という2つの問題が、日本経済を揺るがしかねない事態であることを浮き彫りにした。その結果が、18年4月から10年間限定で始まった事業承継税制やさまざまな補助金であり、要件に合致し事業を承継すれば、事実上無税となる措置が講じられた。
ただ中小建設業の場合、世代交代による事業承継や生産性向上支援といったICT工事対応の設備投資を積極的に行う企業はごくわずか。大半は、こうした対応に二の足を踏む。建設業の後継者不足も深刻だ。帝国データバンクが18年11月に公表した「後継者不在企業動向調査」によると、建設業の後継者不在率は 全産業平均66.4%に対し71.4%と5ポイントも上回る。
一方でいま、多くの地方建設業界で過去のような公共工事予算頼みの成功体験から脱却する動きが鮮明になりつつある。「強靱化の集中投資期間も安倍政権が続く3年間。その後の保証はどこにもない。その先は業界ではなく個社が考える問題」という考え方が広がり始めている。
M&A(企業の合併・買収)だけでなく、企業連携や清算企業の雇用引き受けといった現実的対応をしながら、本音で語り、地域企業の強みを追求する動きは着実に進み始めている。
(交錯する糸・おわり)
残り50%掲載日: 2019年1月10日 | presented by 建設通信新聞