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  • 建築へ/JIA建築大賞受賞の小堀哲夫氏に聞く/革新的なアイデア導く環境に

     建築家の小堀哲夫氏(小堀哲夫建築設計事務所代表取締役)が設計した「NICCAイノベーションセンター」(福井市)が、日本建築家協会(JIA、六鹿正治会長)の2018年度「JIA日本建築大賞」に選ばれた。世界から福井に訪れたくなる研究施設を目指し、「コモン」と呼ばれる吹き抜け空間によって開放的な空間を具現化したデザインが高い評価を得た。小堀氏に作品への思いなどを聞いた。

     

     --受賞の感想を。

     

     「2016年に大賞を受賞した『ROKI Global Innovation Center-ROGIC-』(浜松市天竜区)に続き、大賞を2回も受賞できたことに驚いている。公開審査には、発注者である日華化学の社員や一般市民も駆け付けてくれた。建築に興味を持ってくれることを大変喜ばしく感じる」

     

     --設計で心掛けたことは。

     

     「日照時間が短いという福井の風土を考慮する一方で、社員同士が仲の良い日華化学の企業文化を生かしながら、イノベーションを創出する環境を実現したかった。研究室という閉鎖的な空間を、開放的でポジティブな空間に仕上げたいと考えた。内部には天井スリットを配置した吹き抜け空間であるコモンを設けた。コモンによって、利用者は自然光を浴びながら革新的なアイデアを導き出せると期待している」

     

     「設計に当たり、まず太陽の動きを計算するなど綿密な作業を行った上で、直射を避けるスリット角度や開口部の形状を決めた。柱内部には冷却水管を設け、そこに地下水を流し込むことで、輻射(ふくしゃ)空調を実現した。照明や空調機能を代替する自然エネルギーを積極的に取り入れ、環境面にも配慮した研究拠点に生まれ変わった」

     

     --設計上の課題は。

     

     「今回のプロジェクトでは、スタッフ3人とともに徹夜しながら、かなりの時間をかけて施設のデザインや機能など細部を詰めていった。社員一人一人の能力を最大限引き出す研究施設には何が必要か。日華化学の社員を巻き込んでワークショップを開き、100以上のアイデアを出してもらった。そこで得られたアイデアを具現化することに苦慮したが、社員の意見が十分反映された施設をつくることができた」

     

     --社外にも開かれた研究拠点として注目を集めている。

     

     「民間建築でパブリックスペースを取り入れることが、地域の活性化につながると感じた。人が集まる場所をつくり出すには人の活動をデザインすることだ。それを具現化したのがNICCAだ。1階部分には来訪者が社員と自由にコミュニケーションできる場としてパブリックコモンを配置した。ショールームやカフェ、食堂、ヘアサロンなども設け、地域の交流拠点としての役割も担う」

     

     --今後の活動の方向性は。

     

     「現在、梅光学院大学のキャンパス(山口県下関市)で設計に携わっている。このプロジェクトでも地域に根差した施設づくりを実践する。これからの建築家は目先の仕事だけに取り組むのではなく、発注者の要望に真摯(しんし)に応え、施設利用者のパフォーマンスを最大限引き出せるかが求められる。イノベーション施設だけでなく、今後は利用者が幸福感を感じられるような病院や高齢者施設などを手掛けたい」。

     

     (こぼり・てつお)1971年岐阜県生まれ。97年法政大学大学院工学研究科建設工学専攻修士課程修了、久米設計入社。2008年に独立し、小堀哲夫建築設計事務所を設立。14年から法政大デザイン工学部建築学科兼任講師。これまでに昭和学園高校75周年記念本館、南相馬市消防防災センター、つくば臨床検査教育研究センター、下諏訪南小学校などを手掛けた。BCS賞、日事連建築賞「国土交通大臣賞」、建築学会選奨作品選集、JIA優秀建築選・環境建築賞大賞、AIA(米国建築家協会)賞など受賞歴多数。

     

    【NICCAイノベーションセンターの概要】

     △建物名=NICCAイノベーションセンター

     △所在地=福井市文京4の23の1

     △建築主=日華化学

     △設計・監理=小堀哲夫建築設計事務所

     △構造・設備設計=Arup

     △施工=清水建設北陸支店

     △構造・規模=S+SRC造4階建て延べ7495m2

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    掲載日: 2019年3月22日 | presented by 日刊建設工業新聞

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