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  • 調査基準価格上限引き上げ/業界に歓迎の声/自治体、制度改正へ/検査院、国交省対応が相乗効果

     国土交通省が直轄の「工事」と調査・設計などの「業務」で低入札価格調査基準(調査基準価格)の設定範囲を引き上げたことを歓迎する声が、地方や中小建設業から相次いでいる。品質確保、処遇改善、働き方改革などの側面で算定式の中身が改善されても、受注可否の目安になっている調査基準価格の上限・下限が引き上がらないと、応札企業のコスト増解消にはつながらない実態があるからだ。また、さまざまな理由から地方自治体の入札契約制度改革も進み始めており、建設業界にとって処遇改善と経営環境好転への弾みになりつつある。

     

    1786低入札価格調査基準見直しの変遷
    *赤枠が見直し部分

     

     今回の改定により、直轄「工事」の調査基準価格の設定範囲は2009年4月から採用されていた予定価格の「70-90%」から、「75-92%」へ上限・下限ともに引き上げられた。設定範囲の引き上げは10年ぶり。08年4月からの「3分の2-85%」と比較すると、この10年余りで調査基準価格の設定範囲は、下限で8.4ポイント、上限も7ポイントそれぞれ上昇した。

     

     08年から19年までの間に、調査基準価格の見直しとして、設定範囲のほか、予定価格を構成する直接工事費など各項目の算定式がこまめに変更されている。これは大手企業から中小企業まで幅広い建設企業や業界団体が、国交省など発注および業行政に対し地道な見直しの要望や活動を展開し、これに対し行政側も要望内容を精査・検証して品質確保や産業育成というさまざまな視点に基づいた判断で応えてきた結果だ。

     

     特に発注体制が整っている国交省と違い、中小企業が主戦場にしている地方自治体の場合、技術職員が不足しているため、そもそもの入札契約制度に対する理解が不十分だったり、発注者の責務である品質確保の視点を持たずに価格だけ重視することを建設業界は課題に挙げていた。

     

     その代表例が、12都道府県の68事業体に対し会計検査院が指摘した「総合評価落札方式入札では適用できない最低制限価格を設定していた」問題だ。その結果、17年9月に総務省と国交省は連名で、総合評価方式の入札でのダンピング(過度な安値受注)対策として、▽低入札価格調査制度の活用と失格基準導入▽施工体制確認型総合評価落札方式導入--を通知した。

     

     東京都は他の自治体に先駆けて18年5月に入札契約制度改革の一環として、調査基準価格の設定範囲の上限だけを従来の90%から92%に引き上げた。また長野市も昨年、総合評価に低入調査を導入。さらに北海道や千葉県、長野県、大分県のほか山形市、新潟市、さいたま市、東京都北区、港区などがことし4月から低入調査導入や調査基準価格見直しなど入札契約制度改正に踏み切っている。

     

     会計検査院の指摘を受け是正の動きが進む中、一部自治体の誤解に業界に新たな不安も生まれている。ある地域の中小企業経営者はこう打ち明ける。「自治体発注者は、これからのトレンドは最低制限価格制度の廃止だと得意げに話している。それは違うと言っても聞く耳を持たない」

     

     リーマン・ショック以降、建設業界が強く求めてきた調査基準価格の設定範囲の幅の引き上げがようやく実現した。一方、自治体にとっても、会計検査院からの指摘は、これまできちんと向き合ってこなかった入札契約制度を考え直すきっかけとなった。事実、総合評価の本質を考えたからこそ、低入調査の導入や、調査基準価格の設定範囲と算定式見直し、失格基準や施工体制確認型導入などに踏み切り始めたからだ。入札契約制度の変遷に詳しいある中小建設企業トップは、「制度や発注者への文句がなくなることはない。そんなことより、この10年でどれだけわれわれを取り巻く環境が好転したのか理解すべき。また今後何が必要かを考えるべきだ」と話す。

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    掲載日: 2019年4月15日 | presented by 建設通信新聞

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