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  • 国家公務員増加も出先機関は定員減/整備局 18年連続の減少/自治体の防災・老朽化対策にも支障

     国家公務員の数が横ばいから増加傾向になる中、国土交通省や農林水産省といったインフラの老朽化対策や災害時対応を担う出先機関を全国に抱える省の定員が依然、減少している。特に国交省では、地方整備局職員の定員が毎年減少しており、2018年度は01年度比約2割の減少となった。地方自治体管理のインフラの点検・修繕を国が代行したり、災害時の派遣回数が増加傾向にあるなど、出先機関の重要度が増しており、定員の確保が今後の大きな課題となりそうだ。

     政府では、14年に「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」で、14年度末から19年度末までに全体の1割に当たる2万9672人を削減する目標を立てた。ただ、実際は15年度以降、横ばいが続き、18、19年度は2年連続で増加した。

     

     日刊建設通信新聞社が、内閣官房が公表している「機構・定員等審査結果」を元に調べたところ、内閣府が14年度比770人増、法務省が1751人増、外務省が501人増、財務省が1119人増、環境省が385人増とそれぞれ大幅に増加している。

     

     一方、農水省は特に減少幅が大きく、毎年度300人前後の減少が続き、14年度比では1636人の減少と突出して減少している。国交省も、19年度は前年度比85人増だったものの、15年度から18年度まで毎年度減少が続いていたため、14年度比では561人の減少となっている。特に地方整備局の定員は、19年度も減少し、14年度比で約1400人程度少ないとみられる。地方整備局の定員減少は、01年の国交省発足から18年連続で続いており、特に事務所・出張所の人員は「発足時に比べて約2割超の減少になっている」(国交省技術系職員)という声もある。

     

     地方整備局や事務所・出張所の職員は、現場の最前線で工事監督や公物管理、災害対応などに従事しているにもかかわらず、「職員が1人しかいない出張所の数がいまでは50カ所を超えている」(同)という事態で、事務所の係長が出張所の係長を兼任するケースも増えている。

     

     こうした状況の中、インフラの老朽化は深刻で、国交省の推計では18年度に5兆2000億円だった維持管理・更新費が48年度には最大12兆3000億円にまで膨らむ。適切な予防保全を実施すれば48年度の維持管理・更新費が最大6兆5000億円にまで抑制できる計算だが、適切な予防保全を実施するためには点検員が不可欠だ。出張所職員が管理する河川・道路の管理延長が17年度で2万4197㎞に達している上、老朽化施設は今後も増え続ける。ロボットなどの最新技術を使った点検技術の開発が進むものの、ロボットで点検した結果を確認する監督員が不要になるわけではなく、人員削減を続ければいずれ破たんを来すことになりかねない。

     

     地方自治体全体の一般行政部門職員数は、防災や地方創生などの体制充実を理由に4年連続で増加しているものの、首都圏の人員増が大きく、地方部の自治体はいまも減少が続いている。既にインフラの点検や修繕に対応できない市町村も出てきており、緊急・高度な技術力が必要な施設において国交省が直接、診断する「直轄診断」と、その結果に応じて修繕事業を国交省が代行する「修繕代行事業」も始まった。直轄診断は14-17年度で10カ所、修繕代行は15-18年度で9カ所に及ぶ。こうした事例は、今後もますます増える見込みだ。

     

     加えて、事務所・出張所の職員はTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)として現場の最前線で活動しており、18年度の派遣延べ隊員数は1万人を超える。災害が激甚化・頻発化する中で、早期の激甚災害指定を望む自治体は多く、被災状況調査などTEC-FORCEが果たす役割は大きい。事務所・出張所の職員がこのまま減り続ければ、インフラ老朽化対策や災害対応に支障が出る恐れもあり、定員削減の見直しも必要になりそうだ。

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    掲載日: 2019年5月22日 | presented by 建設通信新聞

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