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相次ぐ政策 業界に“改革疲れ”/重要性「十分理解できても…」/戸惑う中小の元請・下請
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>重層下請構造を最大の特徴とする建設産業界の構造が、相次ぐ施策によって大きな転換期に差し掛かっている中、産業界の主役たちに疲労感が漂い始めている。企業数ベースで建設産業界の9割以上を占める中小企業の元請けと下請けにとって、自らが対峙するさまざまな取り組みは、「新たな時代の新たな業界と建設企業になるためには必要不可欠」との認識で一致している。ただ取り組むべき対象が拡大し、内容も複雑化していることで、これまで構造転換を主張してきた中小企業ほど、取り組み疲れ、換言すれば若干の改革息切れ感が出始めている。
建設産業界は、安倍政権の人口減少と高齢化という2つの課題対応に先駆ける形で、2012年11月、5年間の社会保険未加入対策をスタートさせた。この時、元請けと下請けは行政と発注者には社会保険未加入企業排除を、自らには社会保険加入促進を課すなど構図はシンプルだった。
しかしその後、安倍政権が建設産業界を含む各産業の成長シナリオの実現へさまざまな政策メニューを打ち出したことで、構造転換に向けた取り組みのギアが一気に上がることになる。その代表が、産業の成長と持続につながる技術革新を柱にした「生産性向上」と、多様性と生産年齢人口減少に対応する「働き方改革」だ。
一気に切り替えられたギアをさらに加速させたのが、4月からスタートした「外国人材の受け入れ拡大」と「建設キャリアアップシステム」の本格運用だ。
外国人材の受け入れでは、受け入れる企業が受入計画を作成し国交相の審査・認定を受けなければならないほか、受入対象職種ごとに業界団体が日本入国前の海外試験を行わなければならない。建設キャリアアップについても、各職種団体は4段階評価のうち、知恵の出しどころでもある2段階分を含めた能力評価基準案の作成が求められている。
建設産業界全体で取り組む働き方改革で専門工事企業・業界にとってもう1つ気になることがある。躯体から仕上げまでの各職種の33団体が加盟する建設産業専門団体連合会はこれまで、専門工事業界の代表として行政や元請け、関係各機関と連携してきた。社会保険未加入排除を皮切りに技能労働者の直用化にまで踏み込んだ建専連にも若干の息切れが見え始めた。「建設生産システムを建専連加盟業種ですべて網羅しているわけではない。われわれには非加盟業種・企業にいまの取り組みを展開させることは難しい」
一方、中小企業の元請けも働き方改革と外国人材受け入れ拡大への対応で立ち止まっているケースもある。二の足を踏んでいるのは、中小元請けの現場にとって当たり前になっている「技術者の技能作業」と「多能工」への対応だ。中小元請けの場合、社内の技術者が技能労働者に代わってオペレーター操作などさまざまな業務を行うことは多い。少なくとも社内で技能者を雇用する中小元請けが、新たな外国人材を受け入れる場合、職種横断の多能工の枠組みがなければ受け入れそのものが難しくなる。
しかし、そもそも海外試験の目安になる国内の資格試験に「多能工」という枠はなく、技術者の多能工の役割も地域や企業によって千差万別で範囲を決めることも難しい。
業界慣習を打ち破るインパクトを持った専門工事業の社会保険加入促進に取り組んできた複数の専門工事業経営者と、入札契約制度に詳しく生産性向上の取り組みを進めてきた中小元請経営者はいま、同じ思いを抱えている。
「取り組むべきことがあまりにも多すぎるし、動きが速すぎる。対応できるか少し自信がない」
急激に動き出した担い手確保や生産性向上といった新たな時代における建設産業の成長シナリオには、企業規模や業種を問わず異論はなく、現実に取り組みが進む。しかし、これまで先頭に立ってきた中小企業の一部には、あまりにも対応することが急激に増加したことによる若干の改革疲れがあるのも事実のようだ。
残り50%掲載日: 2019年6月26日 | presented by 建設通信新聞