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  • 現場から・鉄建建設「仙石線中野栄・多賀城間11km308m付近六貫田雨水幹線工事」

    【改良版COMPASS工法を初採用/線路直下、作業時間にも制限】

     

     「COMPASS工法」は、鉄建建設とJR東日本などが共同で開発した小断面構造物の築造に適した非開削アンダーパス工法だ。鉄建建設は、JR東日本が発注した宮城県多賀城市の「仙石線中野栄・多賀城間11km308m付近六貫田雨水幹線工事」で、同工法を改良した「COMPASS工法(地盤切削・函体掘進タイプ)」を初採用し、列車往来の多い線路の直下という難しい環境で、細心の注意を払いながら施工を進めている。 多賀城市は現在、降水による浸水被害解消に向けた雨水幹線整備工事を進めている。このうち、JR仙石線直下の約20mの横断部分とその前後の接続部についてはJR東日本に委託し ている。「仙石線中野栄・多賀城間11km308m付近六貫田雨水幹線工事」はその一環だ。

     

     同工法は、刃口のルーフ先端に取り付けたワイヤで地盤を切削しながら刃口内で掘削を進め、刃口の後方に連結したプレキャスト函体を推進するもの。地盤切削ワイヤで切削溝にルーフが先行貫入されるため、取り込み過多による上方地盤の陥没や刃口が支障物を押し上げることによる隆起を回避することができるなど安全性に優れている。加えて、刃口本体に地盤切削機構を装備しているため施工途中に地盤切削ワイヤを交換できるなど施工面でも優位性がある。

     

     また、従来のCOMPASS工法は適用できる施工延長が20m程度までと制限があったが、地盤切削・函体推進タイプはその制限がなくなり適用が拡大。姿勢制御アダプターによって綿密に姿勢を管理しながら掘進し、より品質の高い施工を可能とした。刃口構造は分割可能で、狭あいな立坑条件下でも施工できることも特長となっている。

     

     同工事の施工個所は仙石線中野栄駅と多賀城駅の中間付近に位置し、仙台臨海鉄道線との交差部に近接している。発進側のヤードは広く確保しているものの周辺道路が狭く、近隣で進む跨線橋建設工事の影響も受ける。到達側はマンションの駐車場を作業ヤードとしており、進入路・作業個所ともに極めて狭い状況にある。こうした条件から、地盤切削・函体掘進タイプが採用された。

     

     鉄建建設東北支店多賀城八幡作業所の光本英士所長は「線路直下の工事であるため、軌道変状を最小限に抑制し鉄道利用者に迷惑を与えないようにする必要がある」と述べ、同工法の安全性などのメリットを強調する。

     

     作業時間は夜間の4時間程度に限られており、また高さが足りず坑内にバックホウを入れることができないため、掘削作業は人力だ。土留めの設置と撤去にも時間がとられるため、1日に掘り進められる距離は15cm×2セットの30cm程度となっている。

     

     6月末時点の進捗率は43.5%で、まもなく最も注意が必要な線路真下の掘削が始まる。光本所長は「掘削掘進を阻害するものが出ないように祈っているが、万一何かが埋まっていた時には切削ワイヤがうまく機能することを期待している」と語る。到達立坑へは9月中旬ごろに達する予定で、全体の工期は2020年2月25日までとなっている。

     

     工事は同工法を初採用した現場であることから注目が集まっている。2、3日にJR東日本と鉄建建設が共同で開催した現場見学会には、鉄道事業関係者など約80人が参加した。23、24日には鉄建建設主催の見学会、25日には多賀城市関係者の見学が予定されている。

     

     光本所長は「初採用の工法であり、また列車往来の多い仙石線の直下での工事でもあるため責任を感じており、身の引き締まる思いだ。周辺の人々にも配慮しつつ、列車運転保安と品質の確保に細心の注意を払って工事を完遂したい」と意気込みを述べた。

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    掲載日: 2019年7月5日 | presented by 建設通信新聞

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