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  • 連載・激動/専門工事業どう乗り切る(下)

    【カードリーダー設置数が課題/登録基幹技能の意義低下懸念】

     

     今年度の建設産業専門団体連合会(才賀清二郎会長)と国土交通省本省、各地方整備局との意見交換会では、建設キャリアアップシステムのカードリーダーの現場設置が共通議題となった。特に地方ではカードリーダーを設置している現場が少なく、建専連の加盟団体からは「せっかくカードを取得しても使い道がない」などの声が相次いだ。

     

     建設キャリアアップシステムについては、個人登録の遅れもさることながら、地域建設企業の同システムに対する理解の度合いがまだ低いという指摘も根強い。だからこそ、建専連幹部は「公共工事に率先してカードリーダーを設置してほしい」と訴える。キャリアアップシステムの広がりが建設生産システムの担い手確保・育成につながるということを、各地域の元請けにどう理解してもらうかという視点で、先導役として公共工事に期待した形だ。

     

     カードリーダーを設置し、カードが使える環境になれば、技能者は現場就業情報が蓄積され、適正な技能評価と処遇改善が期待できる。受注者(元請企業)にとっても現場管理が合理化される。そのため、元請・下請双方のメリットをどのように周知し、カードリーダー設置とカード取得を加速させるかということも課題となっている。

     

     また、建専連は建設キャリアアップシステムで最上位評価となる「登録基幹技能者」の意義が今後、さらに不鮮明になりかねないという懸念が強まっていることも指摘した。

     

     国土交通省、自治体などの公共工事では、総合評価落札方式で登録基幹技能者を評価している。ただ評価は、元請企業が対象で、下請企業の直接評価につながる制度はいまのところない。

     

     日本型枠工事業協会の三野輪賢二会長は本省との意見交換の席上、専門工事業界の登録基幹技能者に対する声を総括する格好でこう言い切った。「今後は設計図書への登録基幹技能者配置を明記すべきだ」

     

     地域・職種によっての偏りや、競争参加者制限になりかねないことを理由に設計図書への配置明記を発注行政が拒否していることは理解しながらも、登録基幹技能者数(3月末現在)が6万7000人を突破、国土交通省が設定した長期目標数を達成している現実を強調した。

     

     その上で、「すぐに配置を義務化するということではなく、専門工事企業が育成してきた登録基幹技能者がどの程度品質に寄与するかを実際に確認してほしい」と現実的な対応を求めた。

     

     基幹技能者から建設業法施行規則を改定し登録基幹技能者講習制度がスタートした2008年から10年が経過。政策をけん引したのは産業行政だが、公共工事で実際に活用する場合は予算の多くが土木工事の発注行政。しかし登録基幹技能者の多くは建築工事が主体。そんな実態を飲み込みながら、専門工事業界はスタート時の2万人超から目標数を突破した6万人超まで広げた。

     

     ただ現実は、目標を達成すれば公共工事で登録基幹技能者がさまざまな形で活用され、専門工事業の企業評価と職人評価に反映されるという将来像はいまだ見えない。三野輪発言は、こうした事情を踏まえ一歩先へ進むための業界側の本音と打開案だった。

     

     全国鉄筋工事業協会会長でもある岩田正吾建専連副会長は「職人は登録基幹技能者を取らされる資格だと思っている」とした上で、「“取りたい資格”に変えていくには、高い技能を存分に発揮できる現場、その成果に応じた所得を通じ、難関資格を取得したことへの誇りを感じられるようにしなければならない」と力を込めた。登録基幹技能者の資格取得意義の低下が、建設キャリアアップシステムの運用・拡大にも大きな影響を与えかねないとみているからだ。

     

     国交省の青木由行土地・建設産業局長は「この業界を良くしていくために売り手(下請企業)が強い市場をつくっていかなければならない。一定の経験や資格を持った技能労働者が競争力をしっかりと発揮できる環境をどうやって構築していくか一緒に考えていきたい」と説明する。

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    掲載日: 2019年8月23日 | presented by 建設通信新聞

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