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3Dプリンターで製造/国内最大規模の構造物/大林組 10月末にも完成/自社施設適用も視野
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>大林組は、セメント系材料を使った3Dプリンターで国内最大規模となる構造物の製造に着手した。幅7000mm、奥行き5000mm、高さ2500mmのシェル型ベンチで、10月末にも完成する。勝俣英雄執行役員技術研究所長兼技術本部副本部長は「耐久性や汚れやすさなどを評価する曝露試験が2年ほど必要だろう」としており、その後、自社施設や技術研究所内の構造物での実適用を視野に入れている。
同社では、2017年に3Dプリンターで構造物の部材を製造する技術を開発し、小規模なアーチ状ブリッジを製造した。この際に、デンカとの共同研究で硬化速度を調整できる特殊モルタルセメント系材料や、スクイーズポンプとロボットアームで材料吐出速度・移動速度を一定化する技術を開発し、3Dプリンターでの課題に一定のめどを付けていた。
ただ、大規模な構造物を製造するためには、RC造の構造物で鉄筋が担っている引張力への対応や、材料を止めたり出したりできるポンプ連動型のバルブ付きノズル、3Dプリンター特有の縄目模様の積層痕が課題となる。
引張力については今回、特殊モルタルを型枠として生かし、内部に引張強度が高く常温で硬化する独自の超高強度繊維補強コンクリート「スリムクリート」を充てんすることで、鉄筋を配置しなくても引張力を発揮する複合構造の開発に成功した。モルタルの吐出を途中で止められないため、積層経路が一筆書きになるという課題に対しては、ポンプと連動して任意でモルタルを吐出・停止できるノズルも新たに開発。積層経路の設計では、3Dメッシュモデルから積層経路を自動で生成するプログラムを開発した。これらの技術開発によって大規模構造物の製造にめどを付けた。
今回、製造しているシェル型ベンチは、3Dプリンターの特長を最大限生かしつつ、引張力などを検証しやすい形状として、オーバーハングのある波のような形状とした。内部構造の検討に当たっては、荷重条件に対して構造物として必要な部分に材料を分布させる最適な形状を導き出せるトポロジー解析を採用し、内部に一定間隔で中空を設けることにした。これにより、内部をすべてスリムクリートにする場合と比べて重量を約50%軽量化した。
費用(単価)は、同様の形状の構造物を鉄筋と曲面型枠で構築する場合と比べて「同等程度」(金子智弥技術本部技術研究所生産技術研究部主席技師)とする。ただ、「今回の形状だと、中空部の型枠が外せないとみられる」(同)としており、3Dプリンターで製造する意義も示した。
実構造物への適用に当たっては、「同じ形のものをたくさんつくるのであれば、プレキャストの方が効率が良い。多数の曲面や中空がある形状など、コスト面も含めて3Dプリンターのメリットが出せるもので考えたい」(同)とする。構造物の大きさについては、今回は固定したロボットアームが届く範囲で検討したものの、アームを移動できる機械にすれば、より大きな構造物の製造が可能。アームは、一般的な産業用ロボットアームを使っているため、移動速度の一定化などの必要条件をクリアできる機械であれば代替できる。
残り50%掲載日: 2019年8月30日 | presented by 建設通信新聞