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  • 2018年本社元旦号(5)

    【乗り越えろ 7つの課題-(1)不透明な建設市場を確実に手にする-/変化に耐える強い足腰を】

     

     市場は時々刻々と変化を続ける。企業は景気の山と谷に翻弄され、かつてない経営危機に直面したかと思えば、かつてない好業績をもたらすこともある。ゼネコン各社は今、市場動向や事業環境の変化に揺さぶられない強い足腰を手に入れるべく、さまざまな知恵を絞って対応している。◆総合建設業

     

    ◇領域拡大/市場獲得へ攻めの動き

     

     2020年東京オリンピック・パラリンピック以降の市場動向について、かねては見方が二分していたものの、最近では「短期的、急激に市場が落ち込むことはないだろう」といった見方に収束しつつある。しかし、長期的には少子高齢化や投資余力の減少に伴う、縮小均衡路線は避けられない。

     

     このため、各社の新たな取り組みに共通しているのが多角化だ。収益源の多様化を進めて、国内市場の山と谷に左右されにくい経営基盤を構築したい考えである。一方、多角化や事業領域拡大による多様な分野のノウハウ蓄積は、高度化・複合化する顧客ニーズや社会ニーズに応える手持ちのカードを充実させることにもつながる。

     

     多角化や事業領域の拡大を目指すに伴い、人的資源やノウハウの確保という課題に直面するケースが多い。このため、M&Aや資本提携、業務提携など異業種との連携に関心を示すゼネコンが増えた。不況時の銀行主導による合併・提携話とは異なり、能動的な市場獲得に向けた攻めの動きでもある。

     

    ◇提携/目立つ住宅業界の動き

     

     「建設業が好調な時だからこそ提携を結ぶ」。熊谷組の樋口靖社長は2017年11月、住友林業との資本・業務提携を発表した記者会見でそう語った。将来的な建設市場の構造変化に備え、木化・緑化関連建設事業、再生可能エネルギー事業、海外事業、共同研究開発事業など事業領域をさらに拡大させる。

     

     提携は、領域拡大に有効なツールだが、水面下ではさまざまな動きがある。

     

     ある準大手ゼネコンは昨年、異業種から持ちかけられた提携の誘いを断った。このゼネコンの幹部は、具体的な提携内容や相手企業については明言を避けたが、「ある事業分野で、特定の1社だけと提携を結べば、その分野での事業の自由度が低下する」と、断った背景を説明した。

     

     加えて、「しかし、そもそも『選ぶ側』と『選ばれる側』という立場では、こうした話はゆくゆく成功しないだろう。重要なのは『互いに選んだ』という両社のスタンスの一致ではないか」との考えを示した。「こうした(提携の)話は今回が初めてではない」とも明かす。

     

     逆の見方をすれば、ゼネコンと組みたがっている異業種が一定数潜在しているということでもある。特に目立つのは住宅業界だ。熊谷組と住友林業が提携を発表した2017年11月、パナホームの親会社であるパナソニックが、松村組を買収すると発表している。さらに遡れば、旭化成ホームズと森組、積水ハウスと鴻池組、大和ハウス工業とフジタなどの動きもあった。

     

     少子高齢化による市場の大きな変化が到来しているのは住宅業界も同じ。むしろ建設業界よりもシビアな局面に入りつつある。住宅着工戸数の推移を見れば、それは明らかだ。住宅メーカーとゼネコンの融合が、どのような化学反応を起こすのか、今後の動きを注視する必要がある。

     

    ◇海外/不動産開発事業を強化

     

     多角化に向けては、バブル崩壊以降凍結していた不動産開発事業の再開、PPP事業などの拡大、再生可能エネルギー事業、施設運営なども含めた各種マネジメント事業の強化といった戦略を打ち出すゼネコンが少なくない。一方、国内の経済情勢に左右されにくい事業の代表格は、やはり海外事業だろう。

     

     「2020年に2割」など、一定の事業比率を海外事業の目標として掲げるゼネコンも多い。東南アジアを中心に事業拠点を新設したり人員・研修体制を増強する取り組みも相次いでいる。こうした中、海外での工事受注に加え、不動産開発事業を強化する動きも出てきた。

     

     シンガポールで2015年に竣工した超高層マンション「スカイ・ハビタット・コンドミニアム」は、現地不動産最大手のキャピタランド社、三菱地所、清水建設の3社による共同事業だ。このプロジェクトは清水建設にとって、20年ぶりの海外不動産開発事業となった。

     

     その後も同社は、シンガポールでデータセンターやオフィスの開発事業に参画。さらに17年11月には、海外で初の単独投資開発となるインドネシアの「チカランサービスアパートメントプロジェクト」を発表した。

     

     一方、鹿島は北米現地法人(KUSA)を通じて、米国南部で賃貸集合住宅の開発・建設・運営事業を手掛ける「フラワノイ社」を買収した。強みの産業分野に加え、住宅分野の開発プラットフォームを強化することで安定的な収益確保につなげる。2017年12月に売買契約を結んだ。

     

     KUSAの米国企業買収は今回が4社目。建設・開発事業との相乗効果が見込める現地企業の買収機会を探ってきた。米国不動産市場の景気サイクルに柔軟に対応し、収益源の多様化も図りたい考えだ。

     

     工事受注、不動産開発ともに固有のリスクがつきまとう海外事業だが、日本のゼネコンによる挑戦は続く。

     

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    掲載日: 2018年1月1日 | presented by 建設通信新聞

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