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  • 2018本社元旦号(23)

    【乗り越えろ 7つの課題-(7)職人評価切り札の建設キャリアアップシステム-】

     

    ■専門工事業/履歴蓄積で処遇改善期待も/今秋稼働、専門工事業者に期待と不安交差

     

     技能や経験に見合った賃金の支払いなど技能者の処遇の改善を目指して、建設キャリアアップシステムがことし秋から稼働を開始する。専門工事業者などの企業側は、現場管理(技能者の入場管理)の効率化といったメリットに加え、システムの活用による将来的な担い手不足の解決に期待感を込める。一方で、「技能評価が本当にできるのか」「職人のために本当に役立つのか」など、その実効性を疑問視する声もある。人々の生活を支えるシステムとなるか、期待と不安が入り混じっている。

     

     建設キャリアアップシステムは、技能者が持つ資格や就業履歴を業界統一のルールで蓄積していく仕組み。技能者に交付する固有のIDカードに情報を蓄積していくことから、所属する事業者が変更になった場合や、建設業を離職して再度、入職した場合でも継続して、技能者が持つ経験値を対外的に残すことができる。

     

     大工、左官など職人や一人親方で組織する全国建設労働組合総連合(全建総連)は、次の若い世代のために必ず進めなければならないというスタンスだ。製造業などの他産業と比較した上で、建設業においても技能者本人を特定できる「本人認証」の必要性を強調する。履歴が蓄積されることで、「腕が良くてやる気がある職人にはプラスに見える制度だ」とも指摘。一人親方の働き方についても、「技能者として働いた履歴と、そうでない部分がはっきりし、処遇改善に向けた問題点が見える化できる」と期待を寄せる。

     

     利用する事業者側にとっては、現場管理の効率化や建設業退職金共済制度との連動(建退共証紙事務の合理化)など、いわゆる「全建統一様式」に沿った施工体制台帳や作業員名簿の出力(書類作成の負担軽減)など、生産性の向上や働き方改革への取り組みを支える効果も期待される。

     

     各専門工事業団体などで構成する登録基幹技能者制度推進協議会の三野輪賢二会長(日本型枠工事業協会会長)は、資格保有者に対しての建設キャリアアップシステムに対する登録申請を推奨。システムの普及を図ることで、技能者の適正な評価と処遇の改善を目指す。

     

     システムの利用料金は、技能者の登録料と事業者の登録料・利用料の大きく分けて2種類。2種類の利用料金のうち、技能者の登録料(配布されるIDカードの発行手数料)は、インターネットによるウェブ登録が2500円、郵送や窓口による発行は3500円。発行されるIDカードの有効期間は10年間となっている。

     

     5年ごとに事業者が負担する登録料は、11段階に区分した資本金別の料金体系を構築。企業規模に応じた階段を設けることで、中小企業を中心としたコスト負担への懸念に配慮した格好だ。事業者の利用料は、ID利用料(1ID=2400円)と現場利用料(1回=3円)の2種類。利用の頻度に応じて負担する形となる。

     

     資本金や完成工事高などをベースにシミュレーションした結果、資本金が500億円、完成工事高が1兆円のスーパーゼネコンに相当する事業者の利用料金は1年当たり2136万円。直轄工事のC-D等級に相当する資本金が1億円、完成工事高が10億円の事業者は1年当たり3万5400円となる見込み。資本金が1000万円、完成工事高が1億円の事業者は6900円。登録料が必要ない一人親方は利用料のみの2820円と試算した。

     

     システム導入で可能となる個々の技能者の能力や力量など「能力評価基準」の策定に向けては、17年11月に「建設技能者の能力評価のあり方に関する検討会」(座長・蟹澤宏剛芝浦工大教授)を立ち上げた。19年度からの運用を想定し、17年度内をめどに一定の方向性をまとめる。

     

     システムに蓄積される保有資格や就業履歴といった登録データと、それぞれの技能者が持つ知識や経験を組み合わせた客観的な「基準」をつくることで、技能や経験に見合った賃金の支払いなど処遇の改善に結び付ける。雇用する専門工事企業の施工力を見える化することにもつながり、優秀な職人を多く抱える専門工事業者がより高く評価される仕組みを築くことになる。

     

     評価の客観性をいかに確保していくかといった点や、評価基準としてのレベル分けをどう行うか、あるいはそれぞれの業種ごとに異なる特殊性をどう制度設計の中で反映させていくかといった点を軸に、英国のNVQ(全国職業資格)制度など、公的な関与によって成り立っている海外の事例も参考にしながら検討を進める。

     

     厚生労働省が持つ「職業能力評価基準」や、建設産業担い手確保・育成コンソーシアム(事務局・建設業振興基金)の「職業能力基準」などをベースにすれば、登録基幹技能者を頂点とする4段階のレベル分けが有力視される。建設キャリアアップシステムで、技能者に交付されるIDカードの色分け(レベル分け)にも連動する見通しだ。 

     

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    掲載日: 2018年1月1日 | presented by 建設通信新聞

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