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  • 2018本社元旦号(22)

    【乗り越えろ 7つの課題-(6)技能労働者の確保・育成に必要な処遇-】

     

    ■設備/休暇取得、残業減少 就労環境改善へ取り組み加速/深刻化する技術者・技能者不足/ICTで業務効率化も浸透/

     

     建設業従事者の高齢化や若者の建設業離れが進む中、設備工事業では工事量の増大に伴う技術者・技能者不足がより深刻な状況になっている。若年層の入職を促進する上で急務となるのが建設現場での「働き方改革」だ。

     

     日本電設工業協会(電設協)が2016年12月に実施した「若手技術者の就労意識に関するアンケート調査」の結果では、就職前と就職後で相違する内容として、「現場優先で休みが取りづらい」が最も多く、「残業が多い」「自由になる時間が少ない」を挙げる声も上位を占めた。こうした就労環境の改善に向けた取り組みが設備各社で加速している。

     

     三機工業は17年11月、施工現場をターゲットにした働き方改革専門委員会「スマイル・サイト・プラン」の初会合を開き、現場担当者の業務負荷軽減と現場力・品質向上のための議論を開始した。

     

     東光電気工事も同10月、完全週休2日制の早期実現や長時間労働の削減などを重点課題に掲げた「現場を変える!行動宣言」と題する青木宏明社長のメッセージを全社に発信。社長直轄の「ワーキングイノベーション室」を同月に設置した新日本空調は「ひとづくり」「生産性向上」「働き方の多様性」の3つの観点から全社横断的に働き方改革を推進し、4週8休の実現などを目指す。

     

     ICTを活用した施工現場の業務効率化も一段と進む。

     

     富士古河E&Cではタブレット端末600台を全現場代理人に配布した。働き方改革委員会の下に「IT部会」も新たに設置。図面の閲覧や申請書類の作成、写真管理などに加え、ITCツールを最大限に活用する方策を探っていく。

     

     高砂熱学工業は業界初の試みとしてスマートウオッチ「Apple Watch」の現場活用を決めた。手首に電話やメッセージなどの通知が届くため、手がふさがっている状態でも操作や連絡応答がしやすく、健康管理も行える。昨年11月下旬から400台を全国の施工現場に順次導入した。有効性が認められれば導入数を増やしていく。

     

     また同社は07年度に業界に先駆けて制度運用を開始した「高砂熱学認定優秀技能者(通称・高砂マイスター)制度」を拡充。最高位ランクの「上級高砂マイスター光輝(こうき)」を創設し、認定者には年間100万円を上限に、建設業界全体でも最高水準となる日額4000円を日当に上乗せする。

     

     優秀な技能者を顕彰する同様の制度は複数の同業他社も設けているが、三建設備工業が17年度から導入する「三建設備工業優良技能者顕彰制度(Skilled Expert Awards Program)」は、18年度以降の申請時に「建設キャリアアップシステム登録」を位置付けたことが特に注目されている。

     

     他方、建築設備の施工は、建築物全体の工程の最終盤を受け持つ。竣工予定時期を動かしにくい実態がある中で、前工程の遅れによるしわ寄せを受けざるを得ないケースも多く、建設現場に従事する技術者や技能者の処遇を改善する上で大前提となる長時間労働の是正や休日の確保は、個社や単一業界の取り組みだけでは実現できないのも事実だ。

     

     このため、電設協では昨夏、日本建設業連合会や全国建設業協会、日本建築士事務所協会連合会の建設関係3団体のトップに現場管理社員の長時間労働是正への協力を直接要請。適正工期の確保や設計図の精査、現場管理体制の強化、安全・品質などに伴う資料の簡素化・統一化などを訴えた。さらに国土交通省に対しても長時間労働是正に関わる諸施策の強力な推進を求めた。

     

     日空衛も同省との定例意見交換会で適正な工期設定と工程管理が民間工事でも徹底されるよう国が策定したガイドラインの周知・普及を要請。特に機械設備の試運転調整期間の確保や日給月給制から月給制に移行した企業が不利にならない仕組みを要望した。

     

     こうした指摘や要望を受けて、国交省も営繕工事における働き方改革の一環として、各工程の適切な施工期間を確保するよう昨年12月1日付で各地方整備局に通知。日空衛、電設協の監修・協力によって、設備工事の実態をより的確に反映した日本建設業連合会の『建築工事適正工期算定プログラム』(最新版)を参考に、設備の試運転や調整を行う「総合試運転調整」の期間確保を徹底させる。

     

     同日以降に入札手続きを行う建築工事、電気設備工事、機械設備工事、エレベーター工事では、概成工期を現場説明書などに特記することを明確化。概成工期の設定を設計図書に組み込み、受注者が作成する実施工程表を監督職員が従前以上にしっかりチェックしていくことで、全体工程の中で帳尻合わせを強いられることが多い最終工程にしわ寄せを生じさせないよう指導を強化していく姿勢を鮮明にしており、その効果が期待されるところだ。

     

    ■専門工事/法定福利費明示をルール化/週休2日制へ直用・月給制

     

     元・下間、下・下間の民民関係に踏み込んだ賃金確保対応が進んでいる。国土交通省は標準請負契約約款の改正を受けて、請負代金内訳書の法定福利費を内訳として明示することをルール化した。2017年10月1日以降に入札契約手続きを行った直轄工事に適用。都道府県・政令市など公共工事の発注者や不動産協会など民間の発注団体、建設業団体に対して対応を周知した。

     

     建設産業専門団体連合会の才賀清二郎会長が「長時間労働の是正や、週休2日制の実現は国を挙げて取り組むべき課題。(働き方改革への取り組みは)発注者の理解なくして成り立たない」と訴えるように、専門工事業にとっては発注者(注文者)との協働が不可欠となる。

     

     建設業社会保険推進連絡協議会のアンケートによると、下請企業から注文者への法定福利費を内訳明示した見積書の提出については、16年で約6割が提出していると回答。14年の31.7%、15年の44.5%から順調に活用が広がっている。提出結果を見ると、54.0%が法定福利費を含む見積もり全額が支払われた。一方で、残る約4割は見積もり総額が減額されたり、法定福利費の一部を含めて減額された契約となっている。

     

     週休2日制の推進に向けては、建専連が技能者の直用(社員化)・月給制に取り組むことを決めた。才賀会長は「週休2日制の実現には、日給・月給では成り立たない。直用し、月給制にしないと若い人は入らない」と強調。技能労働者の処遇改善、他現場への流出防止、若手技能者の確保・育成と技能・技術が伝承できる企業体制を構築する。

     

    ■メーカー/適切な賃金水準と処遇改善/時間有給、在宅勤務--働き方に柔軟性/

     

     スキルアップのための自己投資を後押し--。大建工業は、政府が提唱する「働き方改革」の実現に向けた取り組みの一環として、正社員、契約社員、嘱託社員、フルタイムパート従業員を対象に、2017年夏のボーナスに「自己啓発奨励金」として一律3万円を支給した。従業員一人ひとりの創意工夫によって、業務効率と生産性を高め、結果として長時間労働の削減につなげたい考えだ。

     

     また、「時間単位の有給休暇制度」も導入。これまでの1日、午前、午後の3通りでしか取得できなかったもののほかに、1時間単位で5日分の最大40時間まで分割できる選択肢を加えた。柔軟な取得方法を増やすことで、多様な働き方を可能とする職場環境を整備する狙いだ。

     

     17年11月末には、ワーク・ライフ・バランスやダイバーシティ実現に向けて、管理職の意識改革を促すため、「イクボス企業同盟」に加入、億田正則社長を始め、全管理職332人がイクボス宣言を実施した。

     

     これらの制度を導入した経緯について同社は、「社長を始め、経営陣の意識の高さによるトップダウンの力が大きい。政府が働き方改革を推奨する中、個の企業としても力を入れて充実しなければ、良い仕事はできない」という。

     

     時間や場所にとらわれない勤務制度の充実も必要となる。LIXILでは、ライフイベントを支援するため、昨年10月2日付で「在宅勤務制度」を導入した。出産・育児・介護が主な理由になるが、会社が認めればそれ以外でも取得できるという。

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    掲載日: 2018年1月1日 | presented by 建設通信新聞

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