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  • 建設業はいま■No.1■第1部 衝撃 1

     2018年が明けた。環境は悪くない。昨年末に閣議決定した18年度当初予算案の公共事業関係費は、伸び率がほぼゼロながら6年連続で増額を堅持、17年度補正予算案は地域企業が主役にもなる防災・減災対策を中心に、公共事業関係費は1兆0003億円と1兆円の大台に乗せた。一方、建設市場は首都圏を中心に大きく積み上がった元請けの手持ち工事残高(未消化工事高)のピーク(山)が、ことしから崩れ始める。中小企業に対する強力な支援策が相次ぐ中、表層に反し深層の底流には不安が交錯する。建設産業界の今後と深部の流れを浮き彫りにする。 16年9月末、政府は「働き方改革実現会議」を発足させた。安倍政権は既に、経済成長を続けながら生産年齢人口減少に対応する二律背反の課題解決へ、労働市場への若者・女性の確保・起用などを目標に、「ニッポン一億総活躍プラン」を打ち出していた。

     

     この時まで安倍晋三首相は、「女性や若者の多様な働き方の選択拡大」や「正規・非正規労働者の賃金格差」「高齢者就業」など、日本の労働力減少をどう補うかに力点を置いた発言を繰り返していた。

     

     だからこそ建設産業界は、当時の労働政策の焦点の1つだった「同一労働同一賃金」の動向や長時間労働を問題視した発言よりも、働き方改革実現会議に先駆けて16年9月中旬に開かれた政府の「未来投資会議」での首相発言を重視した。発言は安倍首相自らが、さまざまな技術革新の建設現場への導入によって生産性を25年までに20%向上させることを高らかにうたったもので、建設産業界全体の生産性向上目標数値に据えられた。

     

     しかし、日本建設業連合会(日建連)や加盟する大手・準大手企業は働き方改革実現会議初会合から半年後の17年3月、衝撃を受けることになる。

     

     日本経済団体連合会(経団連)と日本労働組合総連合会(連合)が、「罰則付きの時間外労働の上限規制導入」で合意したからだ。それまで働き方改革をけん引する日建連と会員企業が取り組み始めていたのが、週休2日・現場の4週8休だ。元請技術者が長時間労働になりがちな建設現場で、生産工程を実際に担う技能労働者も含め週休2日を進めれば、年間総労働時間で製造業よりも依然として105時間、年間出勤日数で17日多い建設業の労働実態が改善するという期待があった。当然こうした休日、賃金といった処遇を含めた労働条件が他産業並みになれば、元請けや下請けが大きな課題として挙げていた担い手確保・育成も大きく前進する。

     

     法制化され義務化となる時間外労働時間の上限規制順守は、自主規制として前倒して実施する日建連会員企業にとっても、一歩選択を誤れば途端に、自社の生産供給力減少につながりかねない難題だ。上限規制順守のために、単純に設計や現場の技術系社員の労働時間を短縮すれば、仕事量全体への対応能力は落ちる。増員すれば労働生産性は下がるし収益悪化につながる。

     

     建設産業界で大手企業がけん引する働き方改革。大手が味わった時間外労働時間の上限規制の衝撃をいま、地方の中小建設業界はじわりと味わい始めている。

     

     建設通信新聞は過去、『建設業は いま』と題した長期連載を2回シリーズ化しています。初回は、30年以上前のバブル期以前のこと。建設業界は公共工事市場が低迷し、受注企業は「請け負け(ウケマケ)」と表現し立場の弱さを嘆く中で、地域ごとに有力企業が連携して受注規模を拡大するという新たな動きを掲載。2回目は、05年から07年にかけた、大手企業などが主導して実現させた「脱談合」の舞台裏とその影響などを、当事者の声をもとに劇的な変化を取り上げ、連載しました。

     

     3回目のシリーズはいま、中長期を見据えて建設産業界と個別企業は、何を考え、どのような選択をしようとしているかに光を当てます。労働力減少という日本が避けて通れない現実に直面する中、長期的視点で新たな産業構造へ転換しようとする建設産業界の「いま」と「今後」を提起します。

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    掲載日: 2018年1月5日 | presented by 建設通信新聞

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