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  • 連載・2020年業界を読む・上/川上志向 強める大手/加速する二極化/事業主への提案力が競争の源泉

     日本全体が1つの目標としてきた2020年夏季東京五輪が開催目前となったいま、建設業界はターニングポイントを迎えている。五輪施設の関連工事が収束し、五輪をメルクマールとして整備を進めてきた民間建築も一段落し、競争に厳しさが見え始めた。急激な事業量の減少はないと見込まれるが、“踊り場”となる可能性は高い。事業量という水位がこれまでより低下して姿を現すのは、隠されていた“自力”という土台であり、いまの立ち位置を再確認する年になる。23年ごろに向けて再び水位が上がるとみられるものの、将来に訪れるかもしれない水位の低下に備え、各社はどういう土台をつくろうとしているのか。

     

     将来の事業環境について「大手・準大手、中堅、地場のすべてが生き残る環境ではない」(宮本雅文佐藤工業社長)と率直に口にするゼネコントップは少なくない。その先にあるのは「大手と地元の二極化がさらに進む」(小西武みらい建設工業社長)という未来だ。二極の片方である大手・準大手ゼネコンは規模の拡大を目指し、もう一方は特定の技術・地域に経営資源を集中した特化型へと進む。

     

     ただ、大手・準大手ゼネコンが目指すのは、発注されたものを指定されたとおりにつくる従来型の建設請負の拡大ではない。「受注を目指したものに対して早く体制を整えて勉強し、付加価値を高める提案をして優位性を発揮できる戦略を徹底したい」(井上和幸清水建設社長)という事業者側に早い段階で提案する考え方だ。この考え方は「施工会社であると同時に投資も一緒に進める両面作戦を目指す。技術者として提案しながら良質な開発で投資と技術を事業主に提供し、国の成長を支える」(押味至一鹿島社長)、「案件を見据えて技術をつくり込み、準備するよう営業体制を変える」(清水琢三五洋建設社長)、「社会が大きく変革している中で、そこに役立つ提案・企画を企業や自治体に提案して一緒に取り組んでいく」(奥村洋治フジタ社長)と、もはや大手・準大手ゼネコントップが持つ共通認識と言っても過言ではない。

     

     よりプロジェクトの川上に近づいていくのがこれからの元請けの姿となる。“総合インフラサービス企業”を目指す企業像に掲げ、“脱請負”の先頭を走る前田建設も、「新たなオフィスや住宅の形を提案して事業自体の付加価値をつくり込み、一緒に取り組む」(前田操治社長)ことこそが“脱請負思考”であり、コンセッション(運営権付与)などに積極的に取り組んできた意義だ。飛島建設の乘京正弘社長も「建設事業にとどまらず、ICT対応事業や環境対策事業、再生可能エネルギー事業など対象領域を広げ、都市課題の解決を提供する」としたほか、青木あすなろ建設の辻(点が1つ)井靖社長も「従来のPPP・PFI案件の工事受注から一歩踏み込み、SPCの一部として出資する組織体制を整えたい」と、川上志向を隠さない。

     

     事業主の立場に立って付加価値を提案するためには、社会変革に合った技術・ノウハウが必要となる。ただ、「モビリティーやウェルネスなどのキーワードはあるが、国内に限れば、まだ明確な未来像が描かれていない」(蓮輪賢治大林組社長)という状態であり、だからこそ「さまざまな方面の企業と技術開発・研究を積み重ねる段階」(同)という。これが、各社がベンチャー企業への投資などオープンイノベーションを急ぐ背景だ。

     

     国内での川上側への取り組みが、海外事業の展開へとつながっていく。

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    掲載日: 2020年1月7日 | presented by 建設通信新聞

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