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  • 建設業はいまNo.7

    【70万人の供給力維持が課題/危機感がキャリアアップ推進】

     

     日本建設業連合会(山内隆司会長)が、建設キャリアアップシステムの普及・推進へ向け目標期間を定めた計画、いわゆるロードマップを策定し全面運用へ突き進んでいる。同システムがもたらす新たな建設現場の誕生によって、安全・品質や労務などの管理や処遇改善といったさまざまな切り口で新たな取り組みが可能になる一方で、個社は今後の生産力(供給力)について最低限、現状維持することにさえ危機感を持っていることが、その背景にある。

     

     言い換えると、建設産業界の頂点に立つ大手ゼネコンや準大手ゼネコンでさえ、何も対策を打たずに手をこまねいていれば、自社の供給力を現状維持することさえ難しいという厳しい判断をしていることになる。この厳しい判断の裏返しが、建設キャリアアップシステム運用への強い期待という構図だ。

     

     そもそも、建設キャリアアップシステムは320万人超の技能者に、保有している資格や研修実績といった技能情報や、現場の就労履歴などの情報を内蔵したICカードを発行。ICカードは現場の入退場管理に使われるほか、蓄積された職人それぞれの個人情報は、職人の処遇改善やキャリアパスの見える化にも役立つとして、行政、建設産業界挙げてシステム構築に取り組んでいる。

     

     なぜ日建連と大手ゼネコンなどは、多額の拠出金を含む費用負担を受け入れながら、同システム構築と運用に期待を寄せているのか。

     

     総務省の労働力調査などに基づく建設技能労働者数は320万人超。しかしこの数字に大手ゼネコンなど日建連加盟企業は重きを置いていない。重視する数字は、加盟企業が持つ供給網の合算推計人数である70万人超だ。「供給力の動向を判断する時、現在の供給力を元にするのは当たり前。そもそも技能労働者300万人というが、多くは町場の職人。われわれが求める野丁場の職人とは違う」(ゼネコン役員)ことがその理由。

     

     この320万人超の 建設技能者の年齢階層別建設技能者数を見ると、65歳以上は45.1万人、60-64歳は34.5万人で合わせると79.6万人。これに対し、20-24歳14.6万人、25-29歳19.2万人など、29歳以下が計37.1万人。この数字にゼネコン各社の役員は衝撃を受けた。

     

     この比率から、日建連加盟企業の建設生産を支える供給力数の全体数に占める割合を試算すると、60歳以上は18.5万人、20-29歳が8.6万人。10年後には現在60歳以上の技能者の大半が引退する可能性が高い。つまり10年後、日建連加盟企業は供給力で技能者数10万人の減少を見込んだ対応が求められることになる。

     

     全国ゼネコンの一部役員からは、「市場規模の減少可能性と、今後の生産性向上も踏まえれば耐えられる」との見方があるものの、大手・準大手ゼネコン各社トップの供給力維持への強い危機感に裏打ちされた取り組み意識は揺るがない。

     

     特に建築の場合、多くの工種が関与する重層構造のため、1つの工程でも人手不足を理由にストップすると、プロジェクトそのものに影響を与えるボトルネック発生のリスクが高いからだ。

     

     また日建連会員企業が受けた「10万人の衝撃」を、地方建設業界も理解しているからこそ、情報管理の徹底を打ち出した建設キャリアアップシステムに対していまだに、「地元で育てた職人を取られてしまう」警戒感が根強く残る。

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    掲載日: 2018年1月16日 | presented by 建設通信新聞

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