建設技術者向けNEWS
建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!
-
連載・未来を紡ぐ/持続的経営の危機に直面/インフラ中長期計画 待ち望む声/生き残りかけて奮闘
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>全国展開するゼネコンの業績が堅調に推移する一方、地域建設業は人口減少・少子高齢化に伴う担い手不足や、公共工事量の地域間格差などを受け、持続的経営の危機に直面している。47都道府県建設業協会会長のリレーインタビューでは人手不足や先行きが不透明な公共工事発注量への不安に、生産性向上、働き方改革への対応が重なる中、生き残りをかけた地域建設業の奮闘ぶりが改めて浮かび上がった。持続的発展の原資となる安定的な公共工事量とともに、経営戦略の道しるべとなるインフラ整備の中長期計画を待ち望む声は一段と高まっている。
地域建設業が抱える筆頭課題は担い手の確保だ。青森県では、2001年度に7万6000人だった建設産業の就業者数が16年度には4万9000人と36%減少。島根県では就業者数のうち建設業の占める割合がかつての12.3%から9%に落ち込んでいる。地域建設業では就業者数の減少に高齢化も拍車をかけ、担い手確保は企業存続の生命線になっている。
各地で若手入職者の獲得に向けた取り組みが進むものの、他産業を差し置いても選ばれる産業というにはほど遠い状況にある。公共工事設計労務単価は8年連続で引き上げられてはいるが、週休2日制工事の普及促進などに向け、さらなる単価の引き上げを求める声は各地で上がっている。
連続引き上げを歓迎する一方で、設計労務単価をめぐっては、地域間格差によって生じる担い手の県外流出を危惧(きぐ)する建協トップも少なくない。山形県を例にとれば、3月から適用された普通作業員単価は1万8100円で、宮城県より1100円、東京都より3400円低い。
山形県建設業協会の澁谷忠昌会長は、「設計や測量業務に携わる技術者と同様、全国一律の単価にすれば、賃金の高い都市部への流出に歯止めを掛けることができる」と訴える。佐賀県建設業協会の松尾哲吾会長も隣接する福岡県との“単価格差”を指摘する。他産業との競争以前に、隣県の同業者との人材獲得合戦は地域建設業にとって切実な問題になっている。
将来的な人手不足に備えるための生産性向上については、ICT対応に積極投資する動きがある一方、導入効果を疑問視する声も上がる。導入コストも企業経営に重くのしかかる。
徳島県建設業協会の川原哲博会長は、「高額な建設機械を導入しても、それを利用する工事自体の継続的な発注がなく、地域建設業にとっては現実的ではない」とし、香川県建設業協会の森田紘一会長は、「建設重機などのコスト負担は大きく、仮にそろえても受注できなければ意味がない」と指摘する。
建設キャリアアップシステムに対しては、一部の建協会長から「時期尚早」といった声が上がる。趣旨についての理解は進むものの、「メリットが見いだせない」という意見は少なくない。技能者の引き抜きに対する懸念も根強い。
国土交通省は23日、システムの普及・活用に向けた官民施策パッケージを公表し、23年度からの直轄・自治体・民間のあらゆる工事での原則活用を打ち出した。具体的な期限の明示により、今後はメリット、デメリットにかかわらず地域建設業の対応が加速することは必至だ。
自然災害が激甚化・頻発化する中で、一部の地域からは「結果的に災害の有無で各地の仕事量が左右されている」との声も上がる。建設業の安定経営も含めた地域防災力を強化するためには、防災・減災のための積極的な財政出動とともに、先の見えない不安から地域建設業を解放するビジョンが欠かせない。将来の経営戦略を描くことができるインフラ整備の中長期計画が、地域建設業の未来を紡ぐ。
残り50%掲載日: 2020年3月30日 | presented by 建設通信新聞