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  • 八方ふさがりの専門工事業/守るのは「命」か「工期」か

    【コロナに不安/元請けに不信/今後の生産システムに暗い影】

     

     新型コロナウイルスの感染拡大から専門工事業経営者には先行きへの不安とゼネコンへの不信感は強まるばかりだ。「2、3週間、全現場を止めなければ感染拡大は終息しない」と思う一方で不安と悩みも尽きない。職人の安全確保を優先させるのか、稼働し続ける現場へ職人を行かせるのか。現場閉所になった時の職人の賃金は元請けが支払ってくれるのか。不安と不信の増幅に経営者は苦悩する。

     

     ある下請けの経営者は現状を、「ゼネコンは自分のことしか考えていない。新型コロナウイルス感染拡大前までは、建設生産には技能者の存在が欠かせない、若年者の確保のためには働き方改革は必要だ、優秀な技能者は年収600万円以上に、などと言っていたが、いまはそれどころではないにしても、閉鎖する現場はほとんどなく、下請けのことなど考えていない」と憤る。

     

     別の経営者も、「工期に間に合わなければ、発注者から違約金を請求されるから、発注者の了解を得られなければ稼働せざるを得ないのだろう」と理解を示す一方、「非常事態宣言が出されたいま、命を守るのか、工期を守るのか。元請けに聞きたい」と話す。

     

     「人手が余れば、単価で下請けを叩く。不満なら下請けはほかにもいると言う。その繰り返しできょうまで来た。社会保険加入促進や働き方改革、建設キャリアアップシステムの導入などで、そうしたことが変わっていくかと思っていたが、そうなっていない。役所もまったく分かっていない。下請けのことをどう考えているのか」と訴える。

     

     現場が閉所されれば下請けの面倒をみるとしているゼネコンにも懐疑的な目を向ける。「リーマン・ショックの際にも、またそれ以前にも、こうした事態ではゼネコンは専門工事業者に最大限配慮すると言っていたが、いままで補償したことはない。現場単位では、常用精算で多少上乗せされることはあっても、会社単位ではしない」と言い切る。

     

     そうした中、先を見据え1次下請けが自ら動くケースも出始めた。今後、元請けによる2、3週間の一斉現場閉所を想定し、「職人の給料の3分の2を会社(1次下請)が負担するから、残りの3分の1は負担してくれ」と2次下請けの親方たちに要請した企業や、予定していた社員旅行が中止になったため、その費用に上乗せし、10万円ずつ手当てを支払う準備をしている企業もある。専門工事業も、過去の苦い教訓を糧に職人を守るために腐心している。

     

     また、25日から5月6日あるいは10日まで、現場閉所するゼネコンの中には、元々は閉所を予定していた第2、第4土曜日を稼働させることで、工期を守るとともに、職人の賃金減少も抑えるという取り組みも提案された。

     

     元請けに対し不安と不信が増していることには理由がある。ある下請けが現場の閉所を求めると、「職人は自宅待機させてもパチンコ店に行くだけで、かえって感染する確率が高い。現場に来ていれば、密接接触は休憩時間くらい。休憩時間も車で休憩すれば、感染リスクは低い」とゼネコンから言われた。

     

     「ゼネコンは頼りにならない。そうすると助成金や補助金など公的なものに頼らざるを得ない。しかし、建設業は休業の影響で、資金繰りが苦しくなるのは半年後くらい。その時、助成金や補助金が建設業まで回ってこないのではないか」と他産業と比較してタイムラグがあることで公的救いの手から建設業がこぼれ落ちることへの不安を募らせる。

     

     さらに「ゼネコンは内部留保があり、2、3年は大丈夫だろうが、専門工事業は持って半年とかなり厳しい。専門工事業界として関係各所に働き掛けないと倒産、廃業する企業が多発する」と危惧(きぐ)する。

     

     建設産業が一丸となって取り組み始めた「生産性向上」と「担い手確保・育成」。建設生産システムが変わろうとする途上での“コロナショック”は、建設産業の99%以上を占める経営体力が脆弱(ぜいじゃく)な中小・零細企業の先行きと、今後の生産システムに暗い影を落とし始めている。

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    掲載日: 2020年4月24日 | presented by 建設通信新聞

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