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建設企業、内部留保を積み増し/ROE偏重 距離感が奏功/想定外に中長期戦略役立つ
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>アナリストや一部投資家などから批判の矢面に立たされていた、上場建設企業の内部留保の積み増しが、新型コロナウイルス感染症拡大という想定外の事態で経営安定化につながった。言い換えると近年のROE(自己資本利益率)重視一辺倒から、結果的に一定の距離感を保っていたことが奏功している。ただ、中長期戦略で投資余力アップを目的にした内部留保積み増し分が成長のために使えなければ、生産システム改革を含む生産性向上のスピードにブレーキがかかりかねない。
近年、ROEが特に重視されるようになったのは、機関投資家の責務を求めた「スチュワードシップ・コード」と、企業経営者の責務を明確にした「コーポレートガバナンス・コード」が車の両輪として導入されたほか、これらの実効性を上げるために会社法を改正し社外取締役を選任しない場合の説明責任を求められることになるなどによって、機関投資家との対話が増加したことが大きな理由。
もう一つクローズアップされるのが、株主重視を理由にした利益をどの程度還元するかの指標である「配当性向」アップを求める声が高まったことだ。
その結果、企業の利益を現預金や内部留保積み増しに使うことに対し、「そんな余裕があるなら配当を高めるか自己株取得など株主還元をすべき」との声が強まっていた。
特に建設企業の場合、過去のバブル時の不動産投資失敗を引き合いに、「成長戦略と言って余計な投資に利益を回すなら配当に回すべき」との要求も根強くあった。
この要求をやんわりと表現にしたのが近年、企業のIR(投資家向け広報)説明会で必ず質問される、「キャッシュ(利益)の使い道と還元について」との言葉だ。
一方、株主還元を強く求める声に対し建設企業は、一定程度は配当性向を高める中で、中長期の成長戦略を実行するための原資として、内部留保の積み増しも続けてきた。
利益の株主還元をさらに求める主張に対し、多くの建設企業は、「建設工事は建設途中だけでなく完成後もアフターフォローなどで手持ち資金を厚くする必要がある。資本の効率性という短期的視点だけでなく、建設産業は生産性向上や新たな成長戦略のための中長期的視野に立った投資には内部留保をさらに厚くする必要がある」と訴えている。
結果的に、配当と資本効率を重視する投資家らに対し、建設企業は建設工事の大型化や新たな事業投資、M&A(企業の合併・買収)などさまざまな理由で、資本効率とは逆の自己資本の積み増しへの理解を粘り強く求めていたことが、今回のコロナウイルス影響という想定外の事態で役立つ結果となっている。
残り50%掲載日: 2020年5月11日 | presented by 建設通信新聞