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  • 建設論評・文化をインフラに

     コロナ禍に対する政府の緊急事態宣言は5月25日に全面解除されたが、第2・第3波に備えて「新しい生活様式」は社会に定着するであろう。インフラは医療とともに社会を支えているが、新様式の下でその役割も変化すると思われる。

     

     緊急事態宣言により不要不急とされた、芸術、スポーツ、観光、会食、さらには遊技、接客などの行動が制限されている。その結果、人々の生活には大きな空洞が生じ、経済面の損失も拡大しつつある。これが社会を不安定にしている。

     

     実は、不要不急とされる行動は人間社会に不可欠な「共感」を育てている「文化」だということが分かってきたのである。緊急事態では「文化」が一時的に不要不急とされるのは止むを得ない面もあるが、新様式の社会を支えるインフラの中に「文化」を取り込むことによって、社会を安定させることが期待されるのである。

     

     歴史を見るとインフラは、社会の発展とともに変化してきたことが分かる。かつては土木施設のストック効果により災害を防ぎ、交通、通信、エネルギー、水資源を提供するのが役割だった。

     

     その役割に大きな変化が起こったのは1929年の大恐慌から米国を回復させたニューディール政策によるインフラ投資のフロー効果であった。以来、インフラの役割にはフロー効果が加わることになった。

     

     続いての変化は、70年代の経済成長で変化する社会への対応であった。

     

     この時にインフラは「土木施設」から「社会基盤」へと発展し、ハードだけではなくソフトとの総合システム、社会インフラへと発展した。

     

     21世紀に入ってグローバル化が進むとインフラには地球温暖化への対応が求められるようになり、グリーン・インフラへと拡大している。

     

     そして今回のパンデミックである。前述のように「文化」が社会を支えていることが認識され、インフラに文化を含むことが期待されるようになったのである。

     

     インフラと文化と言えば70年代の日本で「文化技術」という動きもあったが、時代より早すぎたためか大勢とはならなかった。インフラが「文化」というソフト中のソフトに対応することには困難もあるだろうが、社会を支える役割の発展と考えたい。

     

     前述したように、インフラは変化する社会に対応してフロー効果確認、社会インフラ、グリーン・インフラへと発展してきたのである。その過程で新しい思想、学際的な知見を取り込んできたことを想起したい。いま、文化インフラとして発展するのも歴史的必然と言っても過言ではないだろう。 (地)

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    掲載日: 2020年6月4日 | presented by 建設通信新聞

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