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  • 建設論評・オフィスのかたち

     感染症対策としてテレワークが推奨された。このことが事務所ビル市場にどのように影響するかはまだわからない。だが、オフィスのかたちを考えるきっかけになったのは間違いない。

     

     浮上したのは、「なぜデスクワークをするために集まらなければならないのか」「集まって仕事をするのは何のためか」という問い掛けである。

     

     個人作業を主とする仕事は、それを進めるために集まる必要はない。簡単な確認や打ち合わせは、メールや会議アプリケーションで対応できる。十分にテレワークが成り立つのである。一方で、高度な共同性が必要な作業や、難しい意思決定を支援する仕事を進めるには、深い相互理解と成果を総合化する緊張の場が不可欠である。人間的、身体的な対話や交流を通じて仕事が進行するのである。

     

     しかしながら、この2種類の仕事は截然(せつぜん)と区分できないし、情況に応じて性質が変化することもある。多くの仕事は、個人作業と対話・交流とが混じり合って進むのである。

     

     実際、個人作業中に息抜きした時、作業の意味や方針について疑義やアイデアが浮かぶことがある。すぐに言葉にならない時でも、対話や交流の場があればそれを生かすことができる。あるいは、共同作業は個人の自立・自律がないと単なる役割分担に終わる。共同の場から離れて個人で考え、課題を吟味する自由な機会が必要である。

     

     従って、オフィスのかたちは性質を異にする働き方の混じり合いを支え、流動的なニーズに応える場を提供するものでなければならない。組織図どおりにデスクを配置しても、そのような空間は生まれないのである。

     

     理想のオフィスは、個人が自由に働き、集まって対話・交流し、生まれる価値を上手に結びつけるという3つの機能を備えた「場」である。しかもその機能は組み合わさって作動するのである。

     

     事務所ビルは固定した空間に仕事の場を閉じ込めることになるが、そこで3つの機能を担うのは難しい。特に最近の仕事は、開放的な組織のもとで、所属が違う人々とのネットワークを活用する場合が多いから、場を固定することは仕事の可能性を減殺する。もちろん、いくらテレワークシステムを強化しても自宅で3つの機能を満たすことは無理である。

     

     理想のオフィスは、仕事の場を都市に埋め込むことで実現できると考える。居心地が良い個人作業の場や、スリリングな相互関係を包み込む対話・交流の場は、状況や好みに応じてさまざまなかたちがある。幅広い選択の可能性を提供しなければならない。さらには、仕事によって生み出された価値が流通する市場も必要である。これらのニーズを満たすことができるのは都市である。

     

     オフィスと工場とを同一視するのは論外としても、労働法規は工場労働をモデルに組み立てられているし、仕事を定型的な作業の集合と捉える経営者も多い。それは間違いである。オフィスのかたちを見直すことは仕事の再定義に直結する。そしてそこから浮かび上がるのは、都市空間を仕事場とする働き方なのである。(羅)

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    掲載日: 2020年7月3日 | presented by 建設通信新聞

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