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  • 連載・前例なきコロナ対応 第1Qを振り返る(下)

    【夏休み短縮 学校工事に影響/民間市場も不透明/次代を見据え模索始まる】

     

     「現時点では発注件数を減らさないよう調整している。ただ最終的な減少の度合いは、年度が終わって事後的に検証することになるだろう」

     

     ある自治体の契約部署はこう本音を漏らす。多くの自治体はコロナ禍にあっても、積極的に公共工事を発注していきたい考えだ。その一方で、工種別の状況を深掘りすると、学校の改修工事など影響が懸念される案件もある。

     

     新年度を迎えた4月初め、神奈川県平塚市が公告中の学校関連の建築や設備工事17件の中止を突如発表した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で学校の休校措置が続いており、夏休み期間が確保できない可能性を見越した判断で、地元の建設業にとって大きな痛手となった。

     

     これに追随するように、全国各地で夏休み期間の短縮に合わせて学校改修工事などの発注取りやめが相次ぐ。

     

     東京都内では足立区がトイレ改修工事など全43件、計43億円分の工事を2021年度に先送りする方針を決めた。

     

     大田区や品川区でも、校舎の外壁改修工事などを先送りする。足場を設置する同工事では「窓を開けても風通しを確保できず、換気に支障を来す」(品川区)との考えから、見送る自治体も多い。

     

     現時点で、全体の発注件数に変動がないとしている大阪府も、学校施設の改修工事などは「今後発注取り消しが出る可能性がある」と話す。学校施設の関連工事などは、全国的にもいまだ不透明な状況だ。

     

     このような中、地方自治体の中・長期的な公共事業予算の執行状況に注目が集まっている。ある業界関係者は「感染症まん延を防ぐ一時的な措置なのか。それとも感染症対策予算に振り替えられ、工事自体がなくなる可能性もあるのではないか」と危惧(きぐ)する。

     

     公共工事だけではない。最近、より不透明感が増しつつあるのが民間市場だ。1日に建設物価調査会が公表したアンケート結果によると、7-9月期以降の投資計画が「後ろ倒し」または「中止・無期限延期」と回答した企業の割合は14.5%となり、前回3月調査と比べて7.5ポイント増加した。しばらくは予断を許さない状況が続くだろう。

     

    ◆危機に立ち向かう

     

     突如として現れた新型コロナウイルス感染症がある世界では、建設産業界も例外なく、将来の見通しがこれまで以上に難しい。ただ、1つ確かなことがある。これからはコロナとともに生きていく必要があるということだ。既に公共事業の最前線では、次代を見据えた取り組みが動き出した。

     

     6月30日に開かれた東京都の第105回技術会議。20年度全体のテーマに新型コロナウイルスを契機とした“新しい日常”への対応を新たに設定した。ウェアラブルカメラやテレビ会議システムなど、非接触の現場管理、都民向け工事説明会のウェブ開催や行政手続きのデジタル化など、事業継続に関する取り組みを強化する。いわゆる“ニュー・ノーマル”に向けた議論が加速してきた。

     

     公共の市場でも、今後の展望に期待の声が聞こえる。ある政令市の職員はこう話す。「経済のV字回復を目指し、大規模な公共事業の予算が間違いなく計上される。機を逸しないように、万全な情報収集体制を整える必要がある」。危機の中でも、それぞれの立場で冷静に次の戦略を練る姿が見える。

     

     自治体だけではない。国土交通省でもその動きが活発化している。国土交通行政が主軸としてきたインフラの老朽化対策と防災・減災対策という2つの大きな流れに、今後は感染症対策という新たな側面が加わる。ポストコロナをどのように生き抜くか。官民の総力を挙げて、このパラダイムシフトに立ち向かう模索が始まっている。

     

    (高木友季、武内翔、中村達郎)

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    掲載日: 2020年7月8日 | presented by 建設通信新聞

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