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建設論評・コロナと地域・都市づくり
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>7月24日、新型コロナウイルスが世界中に蔓延していなかったら、2020東京五輪開催のセレモニーが盛大に開催されるはずだった。日本で2度目の夏季五輪となる2020東京五輪は、都市としての成熟を示すレガシー(遺産)を残していくことを明確に示した。だから、新規に整備された競技施設や選手村など恒久施設は未来へ引き継ぐことを念頭に多様な仕組みを活用した。その結果、選手村は新たな街に生まれ変わり、競技施設の一部は多目的施設に転換する。これが臨海部地域の成長に寄与し、地域の発展が首都圏さらには日本全体の成長につながるという好循環の流れを生むはずだった。
好循環の期待度合いが「はずだった」へと大きく低下したのは、新型コロナに伴う影響拡大の不透明さが増しているからだ。
そもそも政治が考える成長戦略は、中期的には人口減少と高齢化という2つの構造的問題は解決できないことが前提となっている。人口が減少せず増えていけば、仮に1人当たりのGDP(国内総生産)が横ばいでも、国力を示す指標の1つであるGDPは維持・成長できる。しかも日本で米国などのような移民受け入れ政策を導入することはハードルが高い。
また日本のGDPの内訳を見ると、高度成長期に言われた「輸出立国」は過去の話で、いまやGDP額最大の柱は消費だ。だから国民の消費額を上げるためには所得水準全体を押し上げ↓企業が収益を上げる↓収益アップのためのさまざまな支援--という好循環を描く。
もう1つの消費額アップへ向けた施策の柱が、インバウンド(訪日外国人客)だ。インバウンドの拡大は、各地域で活用しきれなかった観光資源の活性化と雇用を生むとともに、地域が望む地域づくりやインフラ整備を進めることができる可能性も高まる。
ここまでは、新型コロナの治療薬とワクチンが開発され、感染も終息に向かえば再びこの好循環実現は期待できる。
しかし、新型コロナの影響によって好循環実現への期待にも陰りが出始めている。いま新型コロナ感染防止として、3密対策など「新たな日常(ニューノーマル)」が強く言われている。企業は非常事態宣言時、政府要請にも沿う形で、在宅勤務(テレワーク)に切り替えた。宣言解除後、多くの企業は原則出社に戻しつつあるが、東京を中心とした首都圏の感染者急増を受け、在宅勤務に戻す動きが大手企業でも出始めた。
会議もウェブ上で行うことも含めたリモートワークは、働き手にとっては通勤をなくすだけでなく、企業にとっても事務所床と経費削減につながる、働き方改革ならぬ「働き方革命」でもある。
ただこの動き、東京を中心とした数多くの都市再生プロジェクトに今後どのような影響を与えるのか分からないのが懸念材料だ。それぞれの事業の枠組みと資金調達と資金循環が予定どおりなのか、さらにリモートワークの進展度合いとオフィス需要の見合いを見極めることは現時点で難しい。
コロナ感染防止に全力を挙げることは必要だが、頭の片隅に「働き方革命」と建設産業との関係を考えていく時期に来ている。(寿)
残り50%掲載日: 2020年7月22日 | presented by 建設通信新聞