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  • 建設論評・現場のコロナ予防に奇策なし

     新型コロナウイルスの感染予防に奇策はない。政府による緊急事態が解除されて以降、再び拡大基調に転じた状況を見るにつけ、つくづくそう思う。感染は人と人、人と物の媒介が最大のリスクなのは明らかなのだから、予防策は、いわゆる“3密”や“接触”を愚直なまでに避けるのに尽きる。しかし、経済活動は人口集積地ほど大きく、密の状態で展開される。だから、感染回避のためには、国を超えた往来や大規模なサプライチェーン(供給網)によって成り立っている現代社会の構造転換につながる新たな生活様式を追求し、新しい働き方を模索するのは当然の成り行きというわけである。

     

     だが、近未来はともかく、少なくともこの1、2年の時間軸で言うなら、現地一品生産が宿命の建設生産活動ではできることに限りがある。ことは人命にかかわるということもあるが、治癒しても後遺症に苦しむ人もいる。むろん、建設業界もコロナ禍に真剣に向き合い、感染予防に取り組んでいる。最大の懸念は、建設産業の“経済”の部分を担う、建設生産の最前線である建設現場の感染回避はどうやって徹底できるか、である。

     

     実は、予防策は出尽くしている感がある。国土交通省は感染予防対策のガイドラインをまとめているし、東京都を始め多くの自治体も具体的な措置を打ち出している。同様に、各種建設業団体もそれに準じたガイドラインを会員に周知するなど手を打っている。

     

     その中で現場対策は、接触と飛沫感染の防止を徹底し、現場事務所や宿舎、通勤動線、入退場管理、朝礼の運営など細部まで網羅している。しかし現実は、感染の懸念が拭えているわけではない。元請けや協力会社の従業員、さらには数次の下請作業員も不安を抱えながら仕事に勤しんでいる。だが、人間は慣れる生き物である。それまでと違ったやり方にも納得すれば順応性を発揮する。そして、そこに落とし穴がある。

     

     例えば、建設現場の不安全行動による死亡災害である。いまでも原因の多くが慣れによる「うっかりミス」と言われ、うっかりしても事故につながらない足場を始め、各種の装置や装備が求められている。新型コロナのパンデミックについても同様である。気をつけなければならないのは人間の持つ気のゆるみだ。コロナ禍での現場様式を自覚しつつも、「このくらいは」と、ついマスクを外して会話するような、あるいは無意識に3密や接触感染の状況をつくるといった、長年慣れ親しんだ行動を取ることがあってはならない。

     

     英国はイングランドの店舗やスーパー内での買い物客のマスク着用を義務化し、違反者には最大約1万3000円の罰金が科されるという。罰金の是非はともかく、まずは官民すべての事業者に、建設現場でガイドラインを順守するよう強力な指導を求めたい。わが国の政治リーダーにありがちな、注意を促して、後は自己責任と言わんばかりの姿勢なら、周知の各種対策は画餅(がべい)にすぎない。建設現場が安全であるための、ウィズコロナの働き方に奇策はないのである。(惠)

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    掲載日: 2020年7月31日 | presented by 建設通信新聞

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