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  • 建設論評・AIはどこまで建築を変えられるのか

     人工知能(AI)の進化が著しい。金融界では、フィンテックを始めとして、ヘッジファンドなどで活用され、超高速の取引が行われている。もはや既存の金融業界の商取引では成り立たない状況が現実化しつつあるのだ。既存の組織や資本力が物を言う時代ではなく、技術革新を誘導することができる斬新な構想力が問われる時代なのである。

     

     さて、建築の分野でのAIによる改革はどのようなものだろうか。周辺部では確実に稼働しつつあり、さらに生産現場、とりわけ現場の施工管理やロボットによる制御システムなどの分野では、もはやAIの参画は時間の問題であり、技術的にも大きく前進し始めている。こうしたデータをもとにした解析手法を機械学習という。

     

     しかしながら、建築を構想する段階、すなわちデザインやアイデアの検討などの段階でのAI活用はいまだ容易ならざるものがある。アイデアの創出にAIがどこまで近づくことが可能なのか。膨大な量のデータ処理能力は確実に進歩しているが、さらにニューラルネットワーク、すなわち脳を構成するニューロンのネットワーク構造を模したモデルを用いたディープラーニングの手法がどこまで人間の脳のレベルに到達できるのか、現在研究が進められている。しかし、それらの研究でも、現状では脳のほんの一部のモデルがシミュレートされているだけである。そこには人間の身体を再現するほどのレベルの困難さが横たわっているのではないか。AIが人間を超えることは果たして可能なのか。

     

     2013年に英国・オックスフォード大学の研究者が発表した論文「雇用の未来」の予測によると、米国の雇用者のうち47%が10年後にはAIに職を奪われるという。中でも銀行の融資や窓口担当者、タクシーの運転手、料理人、会計士などの職種は90%以上の割合でAIに代替されるという。一方、デザイナーや医者など創造性や協調性が重要とされる職種では、AIに置き換わる可能性は低いと指摘している。この研究を見て感じるのは、脳は単なる高度な計算機なのではなく、優れた創造性を持つのであり、コンピューターがその役割を代替することが可能なのかという疑問である。多くの科学者、とりわけコンピューターの専門家は、現在の技術では多発的な創発は起こりにくく、あくまでも機械学習の累積的成果にすぎないと考えているようだ。

     

     建築の計画・設計の分野では創造的アイデアが多く必要とされる。それゆえに、オックスフォード大学の研究でも指摘されているように、AIはそれにとって代わることは難しいといわれる。

     

     しかしながら、今後、そうした創造性を多面的に支援する膨大なデータ解析が発展してくれば、新たな方向に創造性それ自体が誘導されるという事態は大いにあり得るだろう。そうなれば、その先に果たして何が見えてくるのか。創造的能力をAIが得るのか。答えのその先がどこにたどり着くのか気になるところではあるが、AIに主体性を委ねるのではなく、建築家自らの思考と行動の内にそれがあることを信じたい。 (遍)

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    掲載日: 2018年2月2日 | presented by 建設通信新聞

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